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内容説明
鴨長明が自分のために書き溜めたという仏教説話集。人間の欲の怖ろしさを描き、自身の執着心とどう戦うかを突きつめていく長明の記述は秀逸。新たな訳と詳細な注を付し、全8巻、約百話を上下2巻に収録。
目次
発心集第1(玄敏僧都、遁世逐電の事 同人、伊賀の国郡司に仕はれ給ふ事 ほか)
発心集第2(安居院聖、京中に行く時、隠居の僧に値ふ事 禅林寺永観律師の事 ほか)
発心集第3(江州ましての叟の事 伊予僧都の大童子、頭の光現るる事 ほか)
発心集第4(三昧座主の弟子、法華経の験を得る事 浄蔵貴所、鉢を飛ばす事 ほか)
発心集第5(唐房法橋、発心の事 伊家並びに妾、頓死往生の事 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひさしぶり
17
(心の師となるとも、心を師とすることなかれ)今昔物語のような仏教説話集。愚かな人がうわべの美色にふけって心を乱すのは、便所の中の蛆虫が糞穢を好むようものだ。喩えが強烈。第4-8念仏の功を積んだ人の臨終 が理想。 覚え 法華八講の起源:勤操が栄好の老母を葬い岩淵寺で795年から始めた。2020/02/27
maqiso
4
玄敏や平等供奉の極端な世捨てから始まるの著者の願いが見えて面白い。後の方では奇蹟譚も増えるが。だれにでも開かれている往生を上人がかすかな未練で逃しているのは往生信仰の難しさを感じる。蝶をもてなす佐国子や発心して西へ向かった源大夫の話が面白い。2021/10/22
ブルーツ・リー
4
仏教の説話集のような作品だが、同じように仏教説話を扱った今昔物語や宇治拾遺物語に比べ、非常にシリアスな内容が多いように思われました。 今昔物語あたりは、僧侶が実際に浄土真宗の教徒に向かって説く説話が基になっているから、おそらく普通の人たちに仏教の教えを説くのに、難しい言葉を並べたのでは理解されないのだと思います。 その点、発心集に関しては、さすが鴨長明、文学性、芸術性、独自性に優れ、なかなか、物語として奥行きがあり、文学作品としても楽しめる内容が多かったです。2019/07/09
エビケン
3
「方丈記」の著者鴨長明による『往生ハンドブック』!どうやったら往生できるのか? 貴賤を問わず往生できた人、往生できない人、その往生したいと発心する様を集めた人たちのお話集。 当時の時代のはかないや世間を厭うなどの世相や法華経・阿弥陀仏の本願にすがることが広くいきわたっていることがよくわかります。2022/02/28
荏苒 byn
2
前半古語版、後半に現代語訳版。読み物としては労せず現代語で読んで、不明単語が有れば、前半部の字句解説という読み方が出来る。前半は極楽往生を願って、発心、逐電、西を向いて没するというパターンが多い。後半は高位の人間が、世俗に疑問を抱いて出家とか。後半の説話の教戒・説諭は、徒然草にも似る(朝生まれて夕に死す蜻蛉とか)。2019/05/06