内容説明
埠頭で荷揚げ中に落下事故が起こり、珍しい形状の異様に重い樽が破損した。樽はパリ発ロンドン行き、中身は「彫像」とある。こぼれたおが屑に交じって金貨が数枚見つかったので割れ目を広げたところ、とんでもないものが入っていた。荷の受取人と海運会社間の駆け引きを経て樽はスコットランドヤードの手に渡り、中から若い女性の絞殺死体が……。次々に判明する事実は謎に満ち、事件はめまぐるしい展開を見せつつ混迷の度を増していく。真相究明の担い手もまた英仏警察官から弁護士、私立探偵に移り緊迫の終局へ向かう。クロフツ渾身の処女作にして探偵小説史にその名を刻んだ大傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
143
読み甲斐のある推理小説です。当時の状況としてはこのような推理小説で話をうまく作っていくというのはかなり難しいことだったのでしょう。私はなんどかめなのですが今までは古い訳で読んでいましたが、この新訳は非常に読みやすくすばらしいものとなっています。日本でも鮎川哲也、横溝正史が同じような小説を書いています。これもかなりの水準だと思います。2017/11/13
星落秋風五丈原
89
元鉄道技師クロフツのデビュー作。最初は荷物の到着地であるロンドンのバーンリー警部、次に荷送地のパリを仕切るクリフォード、最後はフェリックスを助けるために雇われた私立探偵と探偵役が次々と変わる。彼等は天才的なひらめきで事件を解決するのではなく、オーソドックスに捜査を進める。例えばこんな風に。 バーンリー警部がパリで誰と組みたいか、と言われて以前一緒に捜査をしたルファルジュを指名し「荷物が着くまで時間があるからセーヌ川の船旅しない?」など捜査の反面現地の料理を楽しんだりやや観光気分なのが面白い。2020/03/14
なる
75
長いのと登場人物の名前が覚えられないきらいがあってなかなか読み進められなかったが、後半になってからの畳み掛けのアリバイ崩しはとても面白い。前半と後半で警察目線と探偵目線とで活躍する人物の比重がガラッと変わる。特に前半の警察官たちが地道に手がかりをさがして犯人特定へ積み上げて行くのは本格ミステリの古典らしさがあってよかった。キャラクタありきの作品ではなく読者も一緒に推理をする感覚なので好き嫌いは分かれるかも。問題は冒頭にある地図が作品の内容にあまり反映されていないところ。土地勘がないとさっぱりわからない。2022/03/17
NAO
70
クロフツは、クリスティやドロシー・L・セイヤーズなどと並んで、イギリスのミステリの黄金時代を築いた作家。『樽』は、彼のデビュー作品で、完璧なアリバイをいかにして崩すか「アリバイ崩し」の金字塔といわれている。死体が詰められた樽の届け先であるフェリックスにはアリバイが無く、不利な立場に立たされている。これが、犯人によって仕組まれたことなら、逆に犯人は完璧なアリバイに守られているはずである。そのアリバイをどうやって崩していくか。このアリバイ崩しが、『樽』の読ませどころだ。2022/04/07
yu
70
Kindleにて読了。途中で誰が誰だか大混乱に(笑)。ロンドン、パリ、ベルギーを行き来しながら、犯人は誰なのかをたどっていく刑事二人と探偵。古典ミステリー、面白い。フレンチシリーズを読まなければ!2019/12/10
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