内容説明
芦屋にある老舗百貨店で働くアラフォーの鮫島静緒は高校卒のたたき上げ契約社員。仕事が認められ、晴れて正社員になったとたん、男性しかいない外商部に配属される。実はカリスマ外商員・葉鳥の退職を控え、後任者を探すべく、全店舗から選りすぐりのメンバーが集められたのだ。一筋縄ではいかない同僚たちとともに、数十万、数百万、数千万円の商品を売る外商の世界に戸惑いつつも、静緒はお客様のところに今日も足を運ぶ――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
522
表紙のイメージで軽~い小説だと思って読んだら、なかなか深~い物語だった。関西の名門デパートの外商部が舞台。「1割の金持ち相手に年商の3割を叩き出す」なんて、知らなかった! 外商部員の禁句は「お金持ち」。この言葉は成金を表し、やんごとない上流の方々を侮蔑しているからだ。時には、普段デパートでは売って無いものも販売。お客からの、無理難題が面白かった。百貨店苦境のいま、一流の外商部員だけは生き残っていける、気がした。そして単なるモノを買っているのか、背後にある物語に共感して買っているのか、わが身を振り返ってみた2022/07/12
風眠
299
デパートを思いだすとき、ちょっとした特別な気持ちも思いだす。子どもの頃、花飾りのフェルト帽に心躍らせたこと、クリームソーダとお子様ランチが嬉しかったこと、大人になって初めてシャネルの口紅を買った緊張感、そして大切な人への贈り物を選ぶときめき。外商さんを呼べるような上流階級ではなくとも、デパートはやっぱり少し特別な場所。伝説の外商員・葉鳥さんと名家のお嬢様、半世紀にわたるふたりの秘めた想いが、夢のように奇跡のように回転木馬を回すシーンにジンとする。新人外商員が奮闘する、贅沢で痛快でキラキラしている物語。2014/02/01
Yunemo
225
百貨店売上を支える「外商」、究極のサービス業と言えます。ただ今後も成り立っていく業態なのかどうか、いみじくも、独身女性管理職等次の層を開拓していく話がありましたが、まさにその通り。百貨店の位置づけ、上流階級に特化するこの業態の将来、まだまだ不確か。また、女性の活用が話題になっている昨今、本作品はそれ以上のたたきあげの女性の生き方をまっすぐに描いています。仕事と人生を切り分けて考えざるを得ない現状。このバランスをどう取っていくのか、恋愛から家庭への道筋、尊敬と愛情の微妙さ、何だかじんわりと伝わって読了です。2015/03/30
紫 綺
180
クリエイティブを売るのが私の仕事なら、夢を売るのが百貨店の仕事なんだ。ネットショピングが発達した現代にも、マンパワーは必要不可欠だと信じたい。人の力を再認識させてくれる、元気とやる気をくれるお話。2014/03/21
FK
171
百貨店そのものになじみがないのですが、外商部といえば金持ち相手の部署ぐらいの認識でした。実際にそうなんで、今後もかかわることはないですが。仕事を通じての人間模様は、やはり身近に感じられることも多くて、読み入ってしまいました。トッカンも面白かったですが、こちらもシリーズ化しないかな。ドラマにしても良いんじゃないですかね。2013/12/16