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内容説明
日本人は両行(りょうこう)と不二(ふに)の間を行ったりきたりしながら、つねに柔らかな思考で、物事に対処してきた民族である。漢字に対抗して仮名文字を作り出したように、何か一つに絶対化せず、あえて対抗するものを作り出してきた。どうちらか一方という西欧の二元論ではなく、どちらもOKという考え方である。一方で、このように対抗させた二つを、なんとか一つに纏め上げることも大切にしてきた。たとえば、神と仏、身と心などがそうで、これがまさに和の心、物事を常に俯瞰してみる「不二」という考え方であり、唯一絶対の西欧的思考にはないものだ。グローバリズムの潮流のなか、アメリカ的システムや価値基準を押し付けられている昨今、日本らしさが消えてなくなる前に、本来の日本的価値基準に戻すべきである。
目次
章前(行き過ぎた合併と、郵政の分業 「はたらく」という言葉 ほか)
第1章 「仕合わせ」と「さいわい」の国―産霊の力への渇仰(この国の心のかたち 世界で唯一、正坐する民族 ほか)
第2章 両行という思想(生成の原理、太極図 儒教と道教の両行 ほか)
第3章 「不二」の思想(身心という「不二」 自在に出入りする「たましい」 ほか)
第4章 結びに代えて(心に完成はない 心の柔軟体操 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
或るエクレア
5
日本人の考え方のクセを「両行」と「不二」という2つの仏教用語を用いて解説。外から入ってきたものを日本式に改良したり、理屈で考えたら矛盾しているような考え方が併存出来るのはそのためか。2016/10/10
Yuko
4
<日本人が持つ柔らかな思考の源を、「両行」と「不二」から解き明かす。生産性のために、わざわざ対を作る「両行」と、物事を俯瞰的に見る「不二」という思考法を、古来から持ち続けてきたからである。それは、災害列島に住む祖先たちが産みだした生き方だった。> 2013年 「両行」と「不二」について学ぶ一冊。 2022/03/21
宮古
3
時間に迫られざっとしか読めなかったのが残念。天武天皇がお辞儀に深い関わりがあったのに驚いた。日本的な部分に多く携わっている人なのでもっと深く知りたい。 日本は中国で伝えられたものが多いので、私の中でなんとなく優劣のようなものを感じていて悔しかったのですが、この本を読んでそうではないと分かって少し嬉しかったです。伝えられた漢字を自分たちの感性で捉え直したい、そういった思いから訓読みが生まれたのだとわかるとすごく大事にしたいと思いました。日本の「絶対的なものに平伏しないしぶとさ」が好きです。読み返したい。2014/04/04
chikapie
2
#読了 水音を表す擬音語・擬態語などを例にした日本語表現の豊かさ、白黒つけず中道をいく良い意味での曖昧さ、あわれ・あっぱれなど日本固有の心情表現、改めて日本の奥深さを知りました。2020/08/29
坂田 哲朗
2
台風11号、家で雨読でした。「両行」と「不二」、難しいようでいてよく読んでみると日本人にはしっくりくる。「環境と自己が別にあるのではなく、それは常に一体なのだから、自分のほうから変わり、やがて環境も変えていくしかないのだ。」とも言っている。自他を分けずに、でも自己の主体性は失わないってことか。たしかにトップダウン型のISOよりボトムアップを志向するQCサークルに魅力を感じてしまう。環境のせいにすればするほど自分の可能性を狭めてしまうことを感じます。2014/08/10