内容説明
飛騨から信州へと向かう僧が、危険な旧道を経てようやくたどり着いた山中の一軒家。家の婦人に一夜の宿を請うが、彼女には恐ろしい秘密があった。耽美な魅力に溢れる表題作や、滝の白糸で知られる「義血侠血」、「夜行巡査」「外科室」「眉かくしの霊」の5編を詳しい解説とともに収録。(C)KAMAWANU CO.,LTD.All Rights Reserved
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
160
迷い家はおんなの箱庭、好きなだけ男をあつめましょ今日はだれと遊ぼうか、わらう口吻はぬらりと光る つめたくなっても紅を塗りたいおんなは美しさに固執して 谷川にひやりと清なる水浴びて、澄んだ声音がうたをうたうとき獣に変えられてももとの世にもどれなくとも、きっとしあわせだろうなどと白昼夢 蛭がひとを溶かしたディストピア、その先に光るしろいおんなの肌は天女のいろをしてた 囚われたい支配されたいただ崇めるだけの怠惰なる日々よこんにちは、わたしはそれでも人に戻ってしまいましたさようなら、2020/07/15
kaizen@名古屋de朝活読書会
138
読み始めて何度か挫折。NHK J文学で英語で紹介があり最後まで読んでみる気に。発見角川の指定も。集英社文庫、新潮文庫の解説も拝読。尾崎紅葉の弟子とのこと。時代背景の理解と、当時の文学の状況について無知であることに気がつく。前後の時代の作品を読んだら、また戻ってこよう。解説:村松定孝2013/10/08
青蓮
98
泉鏡花を初めて読んだのは高校生の時。卒業してからも幾つか読んでましたが今回久々に読んで改めて鏡花が描き出す彼岸の夢幻世界がとても美しく感じました。「義血俠血」は初めて読みましたが、まるで歌舞伎の演目のようで面白かったです。私が初めて鏡花文学に触れた「外科室」も懐かしく読みました。妖しく凄いような美人が登場する「高野聖」と「眉かくしの霊」は鏡花文学の真骨頂。鏡花の文章はすらすらとは読めないけれど、慣れるとこの文体がクセになること請け合い。耽美で此岸と彼岸の合間のような鏡花世界にずっと揺蕩っていたくなります。2019/09/02
aquamarine
94
鏡花の文は普段読みなれているものとは少し違うので、とにかく最初は戸惑った。だが少し読み進めるとこのリズムがとても心地よく、無駄のない美しい文章が紡ぎだす情景に虜になった。「義血侠血」の叫び出したいほどのやるせなさ、「外科室」のラスト一行を理解してじわじわと噛み締める余韻。「高野聖」「眉かくしの霊」この世とこの世ならざるものとの境界が艶やかな女性とともに表現される薄ら寒さ。耽美的美しさは内容だけでなくこの文章からも匂い立つのだろう。気づくと三度目の再読をしていた。鏡花の世界から戻れなくなったかと思った。2019/08/21
優希
86
耽美極まる作品でした。文語で書かれているが故に美しさが感じられるのでしょう。綺麗な言葉とリズム感の良さ。怖さと美しさの混同した世界観が好みです。幻想的な空気感に浸る感覚がいいですね。2019/08/17