内容説明
安重根による伊藤博文暗殺。大逆事件で処刑された幸徳秋水、管野須賀子、大石誠之助。生きのびた荒畑寒村……。日本近代史のなかの人々が、いまそこに生きている人として語りなおされ、歴史の記述にはおさまらないいきいきとしたポルトレとして浮かびあがってくる。小説ならではの達成として動乱の時代を語る画期的な長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
kaoru
63
漱石の寄稿原稿『満漢所感』を巡ってハルビンでの伊藤博文暗殺事件と安重根、「大逆事件」の幸徳秋水や菅野須賀子等が語られる。伊藤に同行していた漱石の親友中村是公、荒畑寒村、エリセーエフ、二葉亭四迷、ドストエフスキーに会った宣教師ニコライなどを通じこの時代の激動性が浮かび上がる。ロシアは革命の勃発前、日本は大陸に触手を伸ばしている。是公の招きで満漢に旅行した漱石の『満漢所感』は漱石らしからぬ煮え切らない内容。政治的な問題にはあまり立ち入らなかった漱石だが少し考えさせられる。暗殺される40年前には伊藤博文も⇒ 2021/05/09
NAO
49
ペテルブルクで、サンクトペテルブルク大学日本語学科の生徒を対象に、日本人の作家が日本語で講演を始める。演題は、「ドストエフスキーと大逆事件」。この作品は、この作家が語ったこととそのあとのいくつかの質疑応答からなっている。語り手の作家はまず一番に明治42(1909)年の11月5日と6日の満州日日新聞に載った、夏目漱石の「韓満所感」上下を取り上げる。夏目漱石は、そこで、昨夜伊藤博文暗殺の号外を見、自分が一カ月ほど前に訪れていたハルピンでそんなことが起きていたということに驚かされたと記している。1人目の暗殺者は2026/06/02
かんやん
30
日本の作家がロシアの大学の日本語学科の生徒に、伊藤博文暗殺や大逆事件について講演するという内容。二十世紀初頭米の最高裁判事が左翼やアナキストの主張を未熟な想念をダラダラ述べる牛のよだれのようなものだと。大逆事件の被告を死刑にするための罪状も、お粗末な牛のよだれのようなものだと講演者。赤旗事件を児戯に類すると分析した大江志乃夫を思い出す。戦略もなく、杜撰で未熟、そして血気盛ん。でも、若さとは、青さとはそういうものではないのか。ちょっととりとめもないような内容であるが、興味深く読んだ。2023/10/08
かふ
27
伊藤博文暗殺事件から10日ほどで漱石が「満州日日新聞」に『韓満所感』という記事を東京から寄稿した。その講演(黒川創の分身?作家のサンクトペテルブルク大学の日本語学科の講演。ドストエフスキーが呼び水)からいろいろ作者の「所感」が続く。後藤明生のエッセイとも小説ともつかないジャンルフリーな散文に似ている。話があっちこっち揺れ動きながらそのうちに焦点が特定の人物に合ってきて、物語る。これは幸徳秋水と管野須賀子の物語だった。テロ未遂事件(大逆事件)から一人の女の感情の揺れを描く恋愛小説のような。2020/01/10
hasegawa noboru
17
「ドストエフスキーと大逆事件」と題して<作家>がサンクトペテルブルグ大学日本学科の学生に向けて語るという設定の小説。安重根による伊藤博文暗殺、それに驚いてすぐに書かれた漱石の「韓満所感」の話題から始まって、大逆事件で処刑された菅野須賀子のことまで。人物と話題があっちへいきこっちへいきするようで自由なエッセイ風小説。講演だからそれでいいわけだ。背後に「この作家」の資料博捜というか勉強ぶりが感じられるし、ちょくちょく顔を出す、作家のストレートな思考も重苦しくなく共感できる。表題<暗殺者たち>の<たち>とは誰々2022/10/01




