内容説明
桐生駿と野田夏が出会ったのは5歳のとき。夏の父に恋した駿の母が、密会のため夏の家に通ったからだ。親同士の情事の間、それとは知らず階下で待っていた幼い二人は、やがて親たちの関係を知る。以来二人は、互いに「できれば思い出したくない相手」と感じながらも、なぜか人生の曲がり角ごとに出会ってしまう。まるで、互いの恋愛の証言者のように。男と女の「愛ではないけれど、愛よりもかけがえのない関係」を描く長編小説!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Lara
76
桐田駿の母と、野田夏の父が不倫関係にありその情事の間、子供の二人で時間を過ごしていた。その後も、事あるごとに 出会う二人だが、恋愛感情もなく、そんな関係にも発展せず。別々の人生を歩むが、事に触れ出会う二人、なんとも不可解で、不可思議な関係。もやもやして、なんだかどうしてよいのか判らず。2023/03/18
なゆ
71
ドロドロしながらもどこか薄情なような荒野さんの書く世界。苦手だと思いながらも引き寄せられるのは何故だろう。ただ、この本はこのタイトルがすごくいい。読んでやっとわかるこの意味。親同士の不倫の逢瀬に連れて行かれていた、幼い駿と夏の、成長し、恋愛し、それぞれに結婚していくなかでの、無視できない存在。子供心に奇妙な記憶として残り、それがのちに影響しなかったとはいえないのかな。ただ、夏の父親と駿の母親の間にずっとあったものが、すごく強烈で印象的。とても身勝手だけど、最後の最後でそうくるとな~。ちょっとしみじみ。2017/04/05
taiko
57
それぞれの父と母の逢瀬に連れていかれていた幼い少女と少年。大人になった2人は、なるべくなら思い出したくない関係、でもときどき思い出してしまう関係になった。…夏と駿、2人の異常とも言える関係、そこに絡めた2人の人生が、とても興味深く、好みの作品でした。2人が成長していく過程で出会った人たちとの繋がり、それぞれへの思い、根底にあるのは親の存在。幼少期の親の影響力の強さを思い知らされる思いでした。最後まで一気読み。面白かったです。2017/04/26
Yuna Ioki☆
56
1352-48-9 井上荒野作品発読み。出てくる人物のほとんどがオシモのゆるい方ばかり(¯―¯٥)純文学でもなさそうだし。何が言いたいのかわからぬままに読了。2016/04/04
nyanco
55
井上荒野節だなぁ…5歳の子供の手を引いて不倫相手に会いに行く母。秘め事の間、階下で待たされる少年少女。こんな幼児体験したらあかんでしょ…と思うのですが、井上荒野らしいなぁ…とも。成長とともに、幼い日々の体験の意味を知っていく彼ら。夏のことや少し心配したけど、想像していたよりもずっと彼らはまともに育ったね。高校生時代の駿と夏の話がとても良かった。大好きな千秋を自分から手放してしまった夏の話が凄く良い。その後、人生の節目節目で出会う二人。一気読みでしたが、高校時代の彼らの話をもう少し深く読みたい気もしました。2013/06/28