内容説明
郊外の古いビルの最上階に住みながら、その地下で喫茶店NADAを営む夫と妻。常連客が集う中、睦まじく振る舞う2人だったが、その裏では、夫の背徳が密やかな嘘を呼んでいた――。夫婦それぞれの心の内を、子供時代の追憶を織り交ぜて描き、不穏な日常を静かに浮び上らせた、こわいまでに美しい物語
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
143
大好物の不倫モノではあるんだけど、どうしてこの夫婦はこんなにもお互いに冷静でいられるのか?不倫につきものであるはずの、いやらしさやドロドロさに欠けるんだよなぁ。どちらかと言うと、不倫はあくまで横糸(ですらないかも)で、縦糸は夫婦それぞれの現在につながる、過去の体験なんかなぁ。この夫婦、どちらにも感情移入できなかったけど、夫の不倫相手のひとりである、ウーボのことは好き。客観的に見たら、あたしは彼女に似てると思う(笑)2015/12/23
とし
141
ベッドの下のNADA。井上荒野さん初読み、お互いの現実と過去の回想をおりまぜて,仲が良いのか、仮面の夫婦なのか、エンドは良かったのかちょっとスッキリしない感があるかな~。他の作品も読んでみよう。2015/07/22
まさきち
58
古いビルを買い取って「NADA」という常連客に支えられてるしがない喫茶店を営む夫婦。お互いが相手のことにへきえきとして、それぞれが想う人を抱えている。そんな彼らの日常を夫・妻と交互に語り部を変えながら各章進んでくのですがいまいち入り込めない、恐らくこの二人の何を考えているのかわからない人間性に共感できなかったからかもしれません。2016/08/05
June
20
喫茶店を二人で営む夫婦の物語。子供時代の回想を絡めながら、妻と夫、交互に日常が語られていく。表面上は仲睦まじいように暮らしている。その実お互いに無関心で、夫には恋人がいて、妻は店の客の一人に心奪われている。そういったお互いの事情を察知しながらも、何事もないように、穏やかに日常をやり過ごしていく二人は怖い。夫は浮気をするけれども、その相手に夢中という訳でもない。夫婦は核心に触れようともしない。別れるわけでもない。長い結婚生活、似たような場面が通り過ぎることもあるかもしれない。そう思わせるのがまた怖いかもね。2015/06/26
桜もち 太郎
19
NADAとは夫婦がビルを買い取り地下にある喫茶店の名前。ベッドの下というのが何となく艶めかしい。店には常連たちが集う一般的な喫茶店で、主人公となる夫婦も一見は仲睦まじく振舞っている。でも何となく溝がある感じ。それは夫がの不倫、妻も男の影を匂わしている。「ちょっと本屋へ」「コーヒー豆を買ってくるよ」は愛人のもとに行く夫のサインだ。これに妻も気が付いている。そして常連客のミノルと妻の関係も怪しい。物語は子供のころの追憶と現代を行ったり来たり。この物語の男女の関係、何となく自分も陥りがちな怖い作品だったな。2025/08/09