内容説明
短篇の名手・山田詠美による宝石箱のような小説集。アメリカ人兵士との恋愛を描く「GIと遊んだ話」から、街に立つ電信柱がその心情を語る「電信柱さん」まで21種のまったく異なる感情の揺らめきが、それぞれにまばゆい光を放つ。恋愛小説、性愛小説、家族小説、戦争小説、喜劇、悲劇とあらゆる小説のエッセンスがぎっしり詰まった、小さくて最高にリッチな1冊。ささやかなのに心をとらえて離さない、極上の物語たち。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
巨峰
70
丁寧に書かれた質の高い短編集だとは思うのだけど、どこか狙いすぎで、テーマ的にも的が絞られておらず、取っ散らかった印象を受けた。特筆すべきは「GIと遊んだはなし」という短編が5作納めてあるんだけど、タイトルの露悪さとは違って、至極真っ当な恋愛小説であり、男女関係小説だった。読み進めているうちに、外国人男性と付き合っている日本人女性に対してもっていたある種の偏見を洗い流してくれた気がした。そういうのって気づかずに持っているものですね。2017/07/23
Take@磨穿鉄靴
59
山田詠美氏の21篇の短編集。正直あまり期待していなかったけど楽しめた。取り立てて何が良かったと問われたら直ぐに言葉が出てこないけどそれは読む側の語彙の貧困さ故。不意に短編同士が隣と繋がってたりして短い話に厚みを持たせたりもした。空いた時間にふんわりしたい時におすすめしたい。★★★☆☆2019/03/11
Kenichi Yanagisawa
57
初、山田詠美さんでしたが、ちょっと合わなかったかも。水彩画よりも油絵のような濃さ、匂い、奥深さが感じられて、作品としては良いんでしょうけど、根底に流れる世の中を斜めに構えている感じがひしひしと感じられて、、、、。うーん。他の作品は違うのかな?2013/04/21
絹恵
42
長い長い方程式を完成させるために結ばせるイコールの物語は、解答者には古い記憶を、当事者には新風を吹き込むものでした。でも方程式を完成させないことに永遠をみるか、完全解に完璧な一瞬をみるか、そんな甘味を残すように敢えて答えを残すやり方が、関係性に意味を求めすぎた時、未解決に意味を与えるのだと思います。2014/10/07
優希
41
山田詠美さんに抱いている勝手なイメージからずっと倦厭していましたが、この作品は良かったです。本当に短い物語がギュッと詰まっているのですが、それぞれが異なる色彩を持ち、輝いているように見えました。繊細な感情が心にすんなり入ってきて、凄く引き込まれます。極上のフルコースを目の前にしているようでした。ストンと堕ちる話から、何とも言えない余韻の残る話まで、収録作品は変化自在です。共通して感じるのは鋭い切れ味ですが、刺さっても痛みというより重いものが響く感じです。ドロリとした世界に浸る快感を感じました。2014/04/15