内容説明
北海道在住の元ブリキ職人の夏目清茂、74歳。ある日、若い友人とスナックで1杯やっていたところ突然脳梗塞の発作を起こし、昇天。その死を悼む娘・息子、遠い昔に別れた元妻、そしてさまざまな友人・知人たち……。葬儀の日まで、そして葬儀の際に彼らが思い出す清茂の姿は、機嫌がよく、優しく、世話好きで――謎の部分もあった。清茂の葬儀を中心に、いくつもの人生が追憶と回想の中で交差する。『田村はまだか』で吉川英治文学新人賞を受賞した著者の傑作長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
真理そら
53
最近はタイトルのような順路表示のあるお葬式は減ったような気がすると思いながら読み進んだ。プロの葬儀屋さんによって、手順を知らなくても菩提寺を知らなくてもコトは進んで行く。会葬者が故人に関わることを思い浮かべる形式で描かれているので故人の人生が見えてくる。『ともしびマーケット』に登場したブリキ職人が名前を変えて登場しているが、こちらの職人は妻に逃げられている。妻と同じことをしようとしている娘の今後が気になる。2022/10/12
siro
50
この世に産まれたからには、死ぬまで生きるしかないなぁ。ただ生きる。どうせだから、ちょっと、頑張って、いい人生だった!とニンマリ笑って死にたいなぁ…「コンフィ」中学生の孫娘の章が良かった。2016/05/08
ばう
35
★★★突然逝ってしまった元ブリキ職人夏目清茂の一生が彼と彼に関わる人々の視点から語られていく。近所の人達からは「朴訥な働き者」と好印象な清茂もただ朴訥なだけでは無く、彼の中では色んな感情が渦巻いているし、ある人から見れば全く正反対の印象を持たれていたりする。確かに私達だってみんながみんな一人の人に対して同じ印象を持つという事は無いだろうし、みんな人に知られない色んな思いを持って生きている。派手さは無いけれど、「死ぬまで毎日生きる」というシンプルだが大切な事に気付かされた心に残りそうな一冊だった。2015/06/14
おさむ
33
新幹線で朝倉さんの2作目読了。ある老人の葬式を巡る家族らの人間模様。。伊丹十三の名作『お葬式』を彷彿させます。田村はまだかと似た手法で、各人物の心情と故人の人となりを浮かび上がらせる。まだ巧くなる作家さんです。楽しみです。2014/01/04
これでいいのだ@ヘタレ女王
25
兎に角 著者は 上手い! 全ては止めておく事は出来なくて、留まっている事も出来なくてけれど、一瞬かもしれない永遠はある。だから夏目清茂は死ぬまで毎日生きた。そして自分も毎日生きる。夏目清茂の突然の死の直前から葬儀までを通し、彼の事や周りの人の普通の毎日、思いが淡々と描かれている。2016/10/04