内容説明
我々の直感は間違ってばかり? 意識はさほど我々の意思決定に影響をおよぼしていない? 心理学者ながらノーベル経済学賞受賞の離れ業を成し遂げ、行動経済学を世界にしらしめた、伝統的人間観を覆す、カーネマンの代表的著作。2012年度最高のノンフィクション。待望の邦訳。
目次
第1部 二つのシステム(登場するキャラクター―システム1(速い思考)とシステム2(遅い思考)
注意と努力―衝動的で直感的なシステム1
怠け者のコントローラー―論理思考能力を備えたシステム2 ほか)
第2部 ヒューリスティクスとバイアス(少数の法則―統計に関する直感を疑え アンカー―数字による暗示 利用可能性ヒューリスティック―手近な例には要注意 ほか)
第3部 自信過剰(わかったつもり―後知恵とハロー効果 妥当性の錯覚―自信は当てにならない 直感対アルゴリズム―専門家の判断は統計より劣る ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kawai Hideki
52
心理パズルのような引っ掛け問題作りを極めるとノーベル賞になるという本。人間の意思決定プロセスが、高速に因果関係や連想関係を見つけ出すがバイアスの罠にはまりやすい「素早い思考」と、論理的に筋道を立てて考えることはできるが怠け者の「遅い思考」の組み合わせである事を実証し、どんなバイアスの罠があるか、その罠にはまらないためにどうすべきかが示唆されている。その一つが「眉をしかめて考える」まさに「まゆつば」。また、バイアスの罠の故に専門家よりもアルゴリズムの方が精度のよい予測が可能であるという話も面白かった。2014/03/09
Yuma Usui
34
ノーベル経済学賞を受賞した著者による人が意思決定するために使用する2つの思考回路について解説した一冊。「速い思考(システム1)」と「遅い思考(システム2)」が存在し、上巻では主にシステム1における多くの錯覚について説明している。直前に見聞きした単語や状況に無意識に影響を受ける「プライミング効果」や、プライミング効果の一つとして、身体的な動作にも影響を与える「イデオモーター効果」が興味深く感じた。何かを決めるとき、頭に浮かんできやすい事柄を優先・利用して判断する「利用可能性ヒューリスティック」も面白い。2020/07/04
ntahima
28
【県図書8】勤勉だが直感的でステレオタイプな速い思考と、思慮深いが怠け者の遅い思考。ステレオタイプが必ずしも悪とは言えない。毒蛇を前に爬虫類図鑑を広げるタイプの人間が後世に遺伝子を残す確立は高くない。速い思考と遅い思考が相まって人間の判断が行われる。但、問題は感情が絡むと速い思考の偏見、過剰一般化に、遅い思考が加担し信念という美名のもとに自己正当化を始めてしまうこと。我々はこのヒューリスティクスな思考法とうまく付き合っていくしかない。俗な意味での無知の知を知るべき。非常に読みやすくかつ示唆に富む。(続く)2015/12/01
masabi
22
【概要】思考を直感型と熟慮型に分けて、いかにミスを犯すかを論ずる。【感想】行動経済学の一般書。先に読んだ「予想どおりに不合理」より手堅い記述で進む。直感型と熟慮型が上手く役割分担して世界を把握するが、特定状況下にはバイアスやエラーによって判断を誤ってしまう。しかも、独力で誤りに気付くことができないというなかなかに厄介な代物だ。本書を読んで意思決定の陥穽を知ることで多少は自覚的になれるだろうか。意思決定は確実なようでどこまでが自分の意思なのか曖昧に思える。統計学やベイズについても学びたい。2018/09/23
スズメ
22
「あなたの意思はどのように決まるか?」もちろん自分で考え、決断しているに決まっているでしょ~と突っ込みを入れ、読んだ本。ハァ~?脳の中には働き者で直情型の「システムⅠ」と怠け物の熟慮型「システムⅡ」に支配されていて、この二つによって意思は決定されているらしい。しかもかなりの確率で外的要因にその意思は左右されているとか。言うなれば完全な自由意思は存在しない事になる。ホンマかいな・・と疑いたくなるけど、読めば読むほどホンマの事だと頷いちゃう。これも操作されているんだろうか。こうなると自分の考えすら信じられない2013/08/15