内容説明
江戸時代初期、備前岡山城下の風呂屋・和気湯に、天女のような湯女がいた。名はお藤。その美貌と諸芸は群を抜き、なぜ下世話な風呂屋にいるのかという人々の疑問はもっともなことだった。だが、お藤はけっして身の上を語ろうとはしない。元藩主のご落胤とも朝鮮王族の血をひくとも囁かれるお藤は、いったい何者なのか――。妖しき湯女は、夜ごと男の伽をしながら、寝物語に不可思議な話をはじめるのだった。圧巻の時代怪談!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
坂城 弥生
51
江戸の頃、風呂屋の湯女のお話。高貴な血を引いているとか様々ウワサされる湯女と嘘か真か境界が曖昧な不思議なお話たちでした。2021/05/27
かんらんしゃ🎡
42
たとえば浅田次郎を思う。同じ奇譚でもジローはキリっとした譲れぬ一歩を背後に感じるが、こちらは何ものにも阿らない自在な柔らかさがある。それは世の中、何が定かで何が定かでないのかという世界観、あるいはひょっとして作者の人生観から生まれているのかも。ま、ホラーを読んでふっくらした優しさを堪能する、おかしな経験をしました。2024/04/09
ラルル
28
怪談というよりお藤賞賛本。湯女のお藤がどんなに良い女なのかが延々と、ほぼ同じ内容の繰り返しで語られていました。章が始まるごとに毎回数ページを使ってお藤賞賛が続き、やっと終わったかと思うとチョロっと怪談らしきものがあり章終了。そして次の章に入ると又長々と「お藤はこんなに素晴らしい」を聞かされる、その繰り返し。「ぼっけぇきょうてぇ」のような面白さを期待していたのにガッカリしました2014/09/12
のぼる
16
『ぼっけえ、きょうてえ』『岡山女』がとても好みの岩井志麻子さん。これまた舞台が岡山。風呂屋の湯女•お藤の語る寝物語。怖い話を期待して読み始めたが、怖いというよりは、不思議なお話。 なんせ、話す言葉、雰囲気がよい。 続編も読みたい。2020/06/27
澤水月
15
風呂屋を舞台に遊女或いは客が語らう虚実綯い交ぜの玄想譚。著者の昔からのモチーフ黒焦げに焼かれた美女と、鳥女の話が美しい。「実につまらん出来事、取るに足らぬ話であったとしても、語り手が優れとったら波瀾万丈の深い話になる。 ほれ、絵に描かれた殿様や姫様は凡庸でも、絵描きが優れとったら、描かれた人は死んでも絵は後世に残るじゃろ。実はたいしたことのない容貌や性質でも、絵描きによって永劫の命を与えられ、物語を生み続ける」…物書きの命題がお藤に託されている 2020/07/24