内容説明
人生という「なぞなぞ」に正解はあるのか?
語り手は、一人暮らしを続ける四十七歳歯科医・和也。実家の父親の看病を名目に妻は不在、大学生になる二人の息子も家を出ている。三歳になるアメリカン・ショートヘアと自適の生活を続けていたが、NHKに勤務する兄・靖彦がアルコール依存症のため緊急入院したことから、物語は動き出す。記憶のなかに留まる、ゼラニウムを描いた一枚の油絵を発端に、入院先の病室から問わず語りに幼少期の記憶を紐解いていく兄。
やがて、その絵は、彼ら兄弟の亡き父が描いたものであることへと逢着する。そして、ゼラニウムとともにその絵に描かれていた少女は、戦時中に五歳で亡くなった叔母であった。同じく五歳で亡くなった彼らの妹と同じ、明子という名の――。
物語終盤。愛娘を過剰に守ろうとするあまり、兄・靖彦は心を乱し、自身の家族を軟禁しての先の見えない小旅行へと事態は発展する。兄の行方を突き詰め、対話を試みる和也。そのなかで、和也は、無自覚にひた隠してきた自身の持つ生の不全感のルーツに思い至る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スリーピージーン
11
家族の物語と兄が病んでいく過程があまりつながらずよくわからなかった。結局家族の絆なんてもろいものだということだろうか?この主人公もエリートではあるけど孤独である。妻とはそこそこ距離を保ち、二人の息子も立派に成長している。でも冷ややかで楽しくなさそうな人生。非の打ちどころのない家も外からみただけでは幸福度はわからないものだ。むしろ精神を病んでいる兄のほうがまともなのかもしれないと思ってしまった。2016/11/22
紫陽花
1
可もなく不可もない作品。 2017/10/18
ざわ氏
1
淡々と進んでいく物語。こういう孤独感は誰もが少なからず持っているんじゃないかな。他人もだけど、自分のことだって完全に理解することはできないと思う。2012/12/16
ひねしょうが
0
並