内容説明
「承知しました」という返答で共犯関係と決断責任の回避を成し遂げ、「そこまでやるとは思わなかった」「その件についてはお詫び申し上げます」という弁明で、自らの正当性を主張しつつ形式的に謝罪する欺瞞を成立させる――原発危機、企業不祥事などで頻発するこの「東大話法」を支えるのが、「立場至上主義」。「立場」はどのように日本人を呪縛してきたのか、そこからいかに逃れられるのかを、気鋭の「東大」社会学者が説く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
糜竺(びじく)
33
予想して以上に面白く勉強になりました。今日の日本では、立場を守るという事が何よりも優先され、立場を守る為には何をしても許される世の中となっていると著者はいいます。たとえ本当の事であったとしても、自分の立場を守る為に、当たり障りのない発言でごまかすか、適当にうそをつくために編み出されたのが、著者が呼ぶ「東大話法」と呼ぶ独特の話法です。わけのわからない理屈を使って、相手をケムにまき、自分の主張を正当化するというこのテクニックについて詳しく載せられており、ホントこういう言い方する人いるなあと感じました。2018/10/09
デビっちん
27
タイトルには「東大話法」とありますが、多くの人が無意識的にこの話し方を使っているように思います。その源泉が立場主義であることを理解し、その欺瞞に満ちた話し方を知ることで、それらを見破ることができ、対応もできる可能性が出てきます。ただ、瞬時に見破り対応するには、相応の訓練が必要と思いました。知らなきゃ訓練さえできないので、やっぱり知識は大事ですね。立場主義や関所ビジネスを中心に、個別の問題を抽象的なフレームを用いて説明していることに美しさを感じました。2018/04/04
こも 零細企業営業
21
2011年の本だった。日本に染み込んでる立場主義。地位と家に縛り付けられていた日本人は明治時代になったら立場に縛られた。そしてその立場が不誠実で無責任な組織を作ってしまった。。 終わってるわ。。もう一度壊れないと治らない。2020/04/15
チャー
9
公的機関で発言される専門家の人が使う話の組み立て方、いわゆる話術に焦点を当て解説した本。著者自身が東大に務められているが、その中で感じた違和感を細かく分類し明らかにしている。難しい専門用語が飛び交う会議や打ち合わせなどでは、ときに言葉の正確な意味を理解できないままなんとなく納得させられてしまうことも多いが、言葉巧みに論点をずらし発言者の意図した方向に結論を持っていく術は正に一つのテクニックであると感じた。背景には日本の立場主義も影響しているという。使用者は必ずしも限定されず至るところに存在していると思う。2020/10/22
更紗蝦
9
36ページに載っている東大話法の法則を読んで、「鈴木篤之氏の主張なんて典型的な東大話法だよなあ」と思っていたら、68ページでまさにその鈴木篤之氏の名前が挙げられていたので、ちょっとびっくりしました。前半はおおむね納得できる内容なのですが、後半で夫婦の問題に言及しているのは、話が飛躍しすぎなのでは…と思いました。詭弁術に対する批判でもなく、組織論でもなく、単なる愚痴になってしまっています。しかも、その愚痴に、東大話法が使われてしまっているという…。ここはかなりもったいないと思いました。2013/01/31