内容説明
「私は,今宵,殺される.殺される為に走るのだ」――誰もが知る〈友情〉の物語「走れメロス」,自伝的小説として名高い「東京八景」ほか,昭和一五(一九四〇)―一六年発表の中期の傑作七篇.〈言文一致体〉の見事な達成である「駈込み訴え」,ユーモアに満ちた翻案小説「清貧譚」など,〈太宰入門〉として最適の一冊.
目次
駈込み訴え
走れメロス
きりぎりす
東京八景
清 貧 譚
千 代 女
風の便り
注………………安藤 宏
解説……………安藤 宏
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ぴー
92
「走れメロス」などを含めた短編集。太宰の作品は以前、『人間失格』を一度読んだだけであった。金、女、嫉妬、卑下など全体的に暗いイメージをもっていたが、本作品を読んで少しイメージが変わった。印象に残ったのは「東京八景」と「風の便り」。意外とユーモアがあり面白い。「風の便り」では、本当はこんなはずではなかったと卑下しながらも、作品を仕上げたい気持ちの葛藤は少しは共感できたかも。「焦らず怠らず、仕事を進めてはいかぬばならぬ」の箇所は、我々現代人にも当てはまるような気がした。太宰初心者には良い本でした。2025/12/07
優希
45
太宰の作品を気軽に読める短編集だと思います。のびのびと書かれた作品たちが心地よいですね。『走れメロス』の命をかけて走る姿から、自分は何かに一生懸命になったことがあるかどうか考えさせられました。特に好きなのが『駆け込み訴え』。イスカリオテのユダの内面を見事に代弁してるように感じます。他にも面白い作品ばかりで楽しめました。2025/12/27
ピンガペンギン
26
昭和15-16年発表。表題作、「駆込み訴え」「きりぎりす」「清貧譚」「千代女」「風の便り」が収録されている。「太宰のストーリーテリングの才能が一番のびやかに発揮された時期」と解説にあるとおり、テーマにそれ程惹かれなくとも、語りの上手さで楽しく読める一冊だった。特に「清貧譚」は聊斎志異(岩波文庫で読めるみたい)の菊の精の話「黄英」が下敷きになっていて、ほぼ漫才並みのノリを感じる。男のしょうもない意地の張り方が笑える。「風の便り」は作家同志の手紙のやりとりだけで構成されており、一方のモデルは志賀直哉?と解説者2025/06/28
クマシカ
15
東京八景は地方から上京してきた身としては自身と重ねる部分もあって興味深く読んだ。長く住んでいるとこの駅にはもう行きたくない、この界隈には近づきたくない、そんな場所が増えていく。とある場所とその時共にいた人の表情や言葉が強烈に結びついて、場所名を目にするだけで感情が揺さぶられたりする。太宰にとって東京は苦しい思い出が多かった、にも関わらず美しい夕陽や誰それとの友情は忘れられないし小説を書くための糧になっている。鎮痛薬使用からなかば不可抗力で中毒になったがそこから本格的に文筆業を始めたことに意地を感じる。2026/06/02
Kooheysan
6
過剰なまでの自意識の発露であった『晩年』とは全く違い、いい感じで力の抜けた、のびのびと書かれた作品たちが心地よかったです。自他への視線、性格の照れくささまで伝わってくるような…自分の感じたことを裏表なく言葉で表現している感じがします。収録されている七篇(「駈込み訴え」「走れメロス」「きりぎりす」「東京八景」「清貧譚」「千代女」「風の便り」)、すべて気に入りました。というわけで、解説の方に敬意を表して、この作品集を全力でお勧めします。「東京八景」を読んで、再度『晩年』が読みたくなってきました。2025/01/23




