内容説明
「私は,今宵,殺される.殺される為に走るのだ」――誰もが知る〈友情〉の物語「走れメロス」,自伝的小説として名高い「東京八景」ほか,昭和一五(一九四〇)―一六年発表の中期の傑作七篇.〈言文一致体〉の見事な達成である「駈込み訴え」,ユーモアに満ちた翻案小説「清貧譚」など,〈太宰入門〉として最適の一冊.
目次
駈込み訴え
走れメロス
きりぎりす
東京八景
清 貧 譚
千 代 女
風の便り
注………………安藤 宏
解説……………安藤 宏
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ピンガペンギン
25
昭和15-16年発表。表題作、「駆込み訴え」「きりぎりす」「清貧譚」「千代女」「風の便り」が収録されている。「太宰のストーリーテリングの才能が一番のびやかに発揮された時期」と解説にあるとおり、テーマにそれ程惹かれなくとも、語りの上手さで楽しく読める一冊だった。特に「清貧譚」は聊斎志異(岩波文庫で読めるみたい)の菊の精の話「黄英」が下敷きになっていて、ほぼ漫才並みのノリを感じる。男のしょうもない意地の張り方が笑える。「風の便り」は作家同志の手紙のやりとりだけで構成されており、一方のモデルは志賀直哉?と解説者2025/06/28
ケロリン
3
解説の通り、太宰治さんの作品を手始めに気軽に読める短編集。「風の便り」に特に感心しました。交流自体、手紙のやりとりが初めての二人が相手を理解して鋭い意見を語り合えるところが凄いと思いました。木戸さんのひねくれ具合も、井原さんの愛情深さも、手紙のやりとりから二人の性質が伝わってきて好きです。読者自身に心当たりのある現代のシチュエーションに置き換えて見るのも面白いかもしれません。例えば、深夜テンションの手紙を渡してしまった(もしくは書き上げて渡す直前までで踏みとどまった)経験や、リア凸などなど。2025/02/11
Kooheysan
3
過剰なまでの自意識の発露であった『晩年』とは全く違い、いい感じで力の抜けた、のびのびと書かれた作品たちが心地よかったです。自他への視線、性格の照れくささまで伝わってくるような…自分の感じたことを裏表なく言葉で表現している感じがします。収録されている七篇(「駈込み訴え」「走れメロス」「きりぎりす」「東京八景」「清貧譚」「千代女」「風の便り」)、すべて気に入りました。というわけで、解説の方に敬意を表して、この作品集を全力でお勧めします。「東京八景」を読んで、再度『晩年』が読みたくなってきました。2025/01/23
小倉俊太朗
0
改行が少なくフランス文学かと思った。駆け込み訴えは落語調を狙っていて、一息で一気に訴えている感じを演出したいのかなと思ったが、他の話も改行が少なくあまり読みやすいものではなかったが、しかし、あまりにも良質な文章がその読みにくさを凌駕した。物語的な発見はできなかったが、句読点を乱発してリズムを作っていくのは参考にしてみようか。清貧譚が好きだった。芯のある人に惹かれる。2025/09/05
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