内容説明
「悼む」という行為は人間だけが持っている。人間は必ず死ぬ。人間は死に向かって生きているのであり、人間にとって死ほど重大なテーマはない。歳を重ねるほどに悼む機会が増えてきた著者がたどり着いた哲学は、「死んだ人は、だれかがその人を思い出している限り生きている」ということであった。親しかった人の死に遭遇しても、いつまでもその人を思い出すことで、その人は生きていたときと同じようにイメージできる。多くの文学は死んだ後もその人を生きていることにできる唯一の方法なのだ。「いつのまにかずいぶん長生きをしてしまった。八十歳も近い」とつぶやく作家が、ここ十年にわたって執筆した追悼文を一章に、二章「よく生きて、よく死ぬ」では「悼む心」が自身の文学に影響している心情をまとめ、三章「読書が培う悼む力」では日本語と悼むつながりを考えたエッセイをまとめ、悼むことの重要性を再認識する一冊。
目次
1章 悼む心を明日の糧に(優しく愉快な井上ワールド いつか読む井伏鱒二 色川武大さんの勝負哲学 ほか)<br/>2章 よく生きて、よく死ぬ(マイナスからの出発 病人と病気の性格について 命を扱う仕事 ほか)<br/>3章 読書が培う悼む力(読書は一生の楽しみ 言葉にまつわる“個人的な体験” おもしろい本が一番 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
takaC
57
無理やり寄せ集めて無理やり題つけた感じがあり冒頭で著者もそれに言及して詫びているが、そもそも主題が「悼む力」だということがわかりにくい内容かも。第三章の「読書が培う悼む力」は主題と離れたところで面白かった。2015/09/09
喪中の雨巫女。
9
《私‐図書館》作者と関わってきた今は亡き作家たち。みんな魅力的で、作品を読んでみたくなりました。2013/07/30
BUBI
7
Man is mortal. とても印象的なので、英語で習っていたら覚えているはずなんだけど覚えてないな。このフレーズが出てくる「はじめに」からとても惹きこまれるエッセイです。普段、あまり小説以外は読まないのですが、この本では、 ──阿刀田さんはエッセイでも阿刀田さんなんだな── と思いました。──で想念を語るのが小説と同じでやっぱり阿刀田さんて好きです。そして私も小学生で図書館通いを始めた頃から星新一の大ファンでした。ショートショートよ、永遠に。私が死んでも私が書いたものを誰か覚えていてくれますように。2016/03/22
reading
2
筆者には若いころ読書の楽しさを教えられました。今では読書の素晴らしさ楽しさをかみしめることができていることに感謝。読書には悼む力があるということをこの著書で実感しました。逝った人たちの名作を読んでみたい。2013/09/16
光雲
1
高校時代から愛読してるからかエッセイでも小説でも阿刀田先生の文章はなんか語りかけるような感じで心が落ち着く。とにかく面白いから面白いものを見つけて気軽に読めばいいという読書推進の簡潔な意見→その通り。読むのが面倒という意見には、若いうちに読むことを習慣として支払っておけば老後にたっぷり楽しめる養老保険みたいなもの→本当、年取ってから時間あるし読書でもするかではやっぱり習慣がないと厳しい。やっぱり大御所は言うことが違う‼︎長生きして楽しもう。2025/01/04
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