内容説明
第39回大宅壮一ノンフィクション賞受賞作! 日本と中国の国交が断絶していた文化大革命のさなか、中国から奇跡の帰国を果たした日本人の戦争孤児こそ、私の父だった――。2つの国の間で翻弄された父は、どんな時代を生き抜いてきたのか。21歳で旧満州に飛び込んだ著者が、戦争のもたらす残酷な運命と、歴史の真実を鮮やかに描き出した傑作ノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
126
中国残留孤児である父を書いたノンフィクション。満洲へのソ連侵攻。4歳の城戸幹は中国人の養母に育てられる。戦火が招いた波乱の人生。この作品は城戸氏の人生を通して、民族を超えた家族の愛、文革の惨禍、中国の反日教育による日本人差別、帰国した孤児達の苦難等、幅広く描く。最も心に残るのは、城戸氏と養母達の深い愛情であろう。なさぬ仲の日本人を25年、愛情を込めて育てた養母。友人達や親族達。再び訪中した城戸父娘を歓迎する彼等の親愛の情。民族は異なり、互いに不幸な歴史や教育もある。だが人は分かり合える。素晴らしい作品。2021/07/22
ヨーイチ
43
良書にして労作。満州残留孤児でその後帰国を果たした父親のことを娘が描いたノンフィクション。重くて劇的なテーマだが、それだけに距離の取り方が難しいと推測できた。父親に聞く娘、娘に話す父親って関係だけでも一筋縄では行かないのが分かる。「人を得た」ことによってこういう貴重な記録が残されたってことは言える。全編金持ちも都会も全く出てこない。逞しい草の根の記録、記憶が抑制された筆致で淡々とつづられている。例えばチャイナ・文革の記録とか少し前の旧満州の田舎の描写とかが印象に残った。どちらも庶民目線からの物。2019/05/20
はやしま
37
読友さんの感想を読んで興味を惹かれ入手。労作。構成の見事さ、調査力と考察力と筆力を感じさせる。先の戦争で幼くして中国に取り残されてしまった筆者の父が日本の赤十字に宛てて書いた肉親捜しを依頼する手紙に込められた思いに涙が滲んだ。それにしても文化大革命のさなかよくぞご無事で帰国された。受け入れ態勢もない中帰国して生活を立ち上げえていくご苦労も多かっただろう。筆者自身も中国へと留学し、父の親族と交わり、父の中国での暮らしを知り、日中関係について考察し、日本に帰国した残留孤児たちのその後を追っていく。(続く)2019/02/11
朗読者
25
感動☆5つ。満州残留孤児となり貧農に育てられ、30歳で1970年に自力で永年帰国を果たした城戸幹さんの生涯を、その娘が詳細な取材で明らかにしたノンフィクション。終戦6日前、長崎原爆投下と同日に開始されたロシアの満州進軍で現地に取り残された満州孤児の幹さんの人生は壮絶であり、また稀有で豪傑そのものだった。日中双方が持つ互いの国・国民に対する複雑な感情や差別をリアルに描きつつ、それを超越するようなアイデンティティへの渇望が奇跡の帰国を実現させた実話に感涙。その後、娘にも継続される貧農家族との交流も素晴らしい。2022/08/15
James Hayashi
21
中国残留孤児の父を持つ著者が、父が貯めた資料から父の軌跡を追い、さらに2部では著者自身の目で見た孤児たちの様子と近年の満州を書き綴った作品。父がいかに両親と別れ、中国の養父母に育てられたか。長い年月を掛け、如何に日本に住む肉親を探し当てたかを坦々と書き記す。お涙頂戴ではないが、父が日本へ戻り異なる苦労をされていることに戦争に終わりなきことを感じた。まだ著者の父は優秀で努力家であり日本でも仕事を見つけられたが、多くの孤児たちが苦労し、国に賠償責任を追及している姿勢には同意できなかった。秀逸なノンフィクション2015/05/24
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