内容説明
トウ小平が敷いた中国の改革開放路線がはじまり30年。中国はGDPでアメリカに次ぐ世界第2位、巨大な貧富の格差がある社会になった。文革以降も重きをなす保守派と経済開放、民主化を急ぐ改革派、その狭間で自らの権力を維持しつつ、トウ小平はどのように決断していったのか? 毛沢東死去、天安門事件、南巡講話など、中国の現代へと至るトウ小平決断のポイントを、産経新聞中国総局長(当時)・伊藤正氏が内外の資料を駆使して活写。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Roy
5
上巻は天安門事件からスタートし、その後文化大革命時代に鄧小平が何を体験してきたかを著述。経済改革と共産党体制の維持という観点からみたときに、胡耀邦と趙紫陽ら革新派を用いつつ、陳雲ら保守派元老といかにバランスさせていくか苦心した様子が伺える。天安門事件を党の体制維持の観点からの弾圧とだけ見るだけでは理解できないように感じた。2019/06/07
glaciers courtesy
4
鄧小平が中国の近現代史上では最も偉大な政治家であるという位置付けであるということに異論がある人は少ないだろう。その鄧小平の唯一の汚点とも言われている天安門事件のときの鄧小平の動きや判断などが克明に記されている。鄧小平といえど、まずは自分の地位が守られることが一番であって、その上に理想の実現があるというのは何人も変えられないところなんだなと再確認した。また、文革時代は自分の信念を曲げ、自己批判をしてでも毛沢東という絶対権力者についていく姿もかなり衝撃的。志があっても生き残らなければ歴史に名前は残せないのだ。2016/03/11
ホン
3
勢いのある中国も鄧小平がいたからこそだと思い読んでみた。毛沢東率いる文化大革命、それに天安門事件が詳細に語られている。前者は周恩来、江青夫人、林彪、といった 昔、毎日のように新聞を賑やかせた名前もあり権力闘争の凄まじさと鄧小平の3度の失脚について、後者は中国共産党の存続を絶対視しそのためには武力弾圧もやむを得ないという疑問を持ちながらもそれに向かって行動を起こそうとする鄧小平とそれに反対する知識人、学生達の葛藤について、そうした大きな事件が背景にありながら 経済発展を願い続ける鄧小平の姿勢も伺える。下巻へ2015/06/13
鈴木貴博
2
筆者自身の取材・見聞と様々な史料の渉猟により、鄧小平氏の軌跡を辿る。上巻は第二次天安門事件、南巡講話、そして文化大革命に遡る。2021/07/24
nunu
2
新聞掲載時から楽しみにしていた特集記事。 鄧小平のことよりも、天安門事件を詳細且つ簡明にレポートしている点のほうが価値が高い。新聞掲載時に「天安門事件も20年という時間の経過は、様々な証言がある程度出し尽くすには十分な時間だったのだ」と感じたことを思い出す。中国やインドといった伝統的な大国の勃興にあたって、こうした国々の近代史を知っておくことが必要になっていくのだろうと思う。2013/12/24