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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
179
本書を読むまでは、日本語の「女ことば」が自然発生的に生まれてきたものだと思い込んでいたが、それがきわめてナイーヴな考えであったことを知った。序章の例にあげられているように、現在もっとも典型的な「女ことば」は、翻訳書の女性言葉にこそ見られるものということになるようだ。例は『ハリー・ポッター』のハーマイオニのセリフなのだが、言われてみるとたしかに誰もこんな話し方はしていない。「言語イデオロギー」から「隠された男性性」、果ては天皇制へと論は展開するが、本書は言語学の立場からのジェンダー論として、きわめて示唆的。2014/04/12
樋口佳之
59
内言としても使うのだから、言葉の持つ拘束性って最強度なんだろうし、そこに性別による差別化を導入しようとするお話には重々気をつけないと。女ことばに関わる歴史的変遷とその狙いとして来たものを学べる一冊だと思います。良き。/一方将来の事を考えると、名詞の性別分けみたいな文法にはっきり性が入り込んで無い日本語は有利な部分もあるのかしらん/女性が内言においてどのような言葉使いをしているのかは想像出来ない。どうなんでしょう?2022/01/22
帽子を編みます
50
女ことば、思い浮かぶのは小津映画のセリフ、兼高かおる世界の旅での兼高かおるさん、翻訳小説の過剰に女らしいセリフなどでしょうか。この本では女ことばがどのような価値、規範、イデオロギーなどを担ってきたのかを多数の使用例とともに読み解いていきます。女の置かれた立場とも重なります。「てよだわ言葉」「〜こと」「〜かしら」小説で使われるから女性に広がる現象。言文一致論争の部分、「男の国語」の創生を目指していたという考察。戦後の男女同権との関わり。示唆に富む内容、知的好奇心が刺激されて面白かったです。2023/08/08
がらくたどん
41
「女ことば」が実使用言語だった時期と場面はかなり限定されている。それらはある意味女性の反抗心とか洒落っ気の発露であった。戦後生まれの自分は無論、明治・大正・昭和初期の上の世代には「へりくだった物言い」と「高飛車な物言い」の区別はあったが実会話での性差を感じたことはない。そんな実体のない「言葉」なのに書言葉として若い作者や脚本家の書く文章や台詞にも残る不思議と「女ことばを使う女性」というフィクションに添付された「慎み深さ」とか「上品さ」という概念とそれらが「日本古来の伝統だ」という神話を再吟味できる良作。2022/02/14
更紗蝦
31
日本の多くの方言には男女の区別がないのに標準語には「女ことば」という概念があるのはなぜなのか? なぜ女性だけが言葉づかいによって「女らしさ」を表現することを期待されるのか? …という問いに答えることを目指して、鎌倉時代から第二次世界大戦までの「女ことば」の歴史を辿っている本です。日本のジェンダーギャップが世界的に見てかなり酷い理由には、日本語の在り方が男女格差を内包しているからなのでは?…という疑問が自分の中にあったのですが、その推測は間違っていなかったと確信できました。2022/03/24