内容説明
「本日敵出撃ノ算ナシ」――隠蔽されてきたこの敵情報告に油断して、空母四隻を誇る南雲艦隊は、暗号を解読し待ち構えていた米機動部隊に大敗北を喫した。生き残った戦闘員への丹念な取材を元に、山本五十六の構想から参謀や部隊指揮官の思惑、パイロットや整備兵の奮闘まで、戦闘の全過程を克明に描く壮大な戦史ノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鐵太郎
14
ミッドウェー海戦についてはいろいろ読んだが、これほど多くの声を集めて執拗に組み立てたものは始めてかもしれない。コーネリアス・ライアンやジョン・トーランドを読んでいるようだ。あの海戦の結果を、単純に慢心や無能だけでなく、さまざまな要因から再構成したのは立派。あの戦争から70年近く経たないとこのレベルの本が書けないのは寂しいと思うんだけど、こういった本が他にもあるなら読んでみたいな。それにしても、記述は少ないが、栗田提督てなァもうちょいまともかと思っていたけど、「逃げ腰提督」はこの前からだったんだな。2016/06/10
CTC
12
第二部は「運命の日」。読みたいことドンズバの事が記されているのだけれど、各艦の空しい奮闘は読むに切ない。発進準備中の空母は一度被弾して仕舞えば次々誘爆して消火はならない。例えば飛龍などは、実は「機関はも半分は稼働できて、充分内地までは航海でき」る位だったが、50ミリ鋼板が「赤熱してペンキが燃え落ち」と地獄のような有様だ。 とはいえ実は本書も…時間軸がよくわからない記述や、読んでいて腑に落ちない命令(実行されたフシがない)が出てきて明快とは言えないのだが…理由はあとがきに記される。まぁすごい話。2021/03/06
Book Lover Mr.Garakuta
11
全体が分からず難しいです。2020/12/04
兵衛介
10
奢れる者久しからず。いかに強力な艦隊であろうとも、これだけ無能な幹部に率いられ、敵を舐めていたら勝利の女神に嫌われるのは当然と思う。日本海軍は勝利者に値せず、惨敗は妥当な結果だった。更に責任をうやむやにし、敗因を追求することもせず「運命の五分間」という嘘を創作して歴史を捏造…また南雲司令部と対照的に有能とされている山口少将も、第三次攻撃隊をすぐに発進させず、薄暮攻撃を企図して待機したのは彼らしくない判断ミスではなかろうか。結局ただ一艦残った飛龍も攻撃隊待機中に被弾し誘爆という三空母と同じ運命に。2012/06/23
tsuyoshi1_48
7
事実関係はわかっていてもやはり引き込まれる。4空母を沈めた米軍の急降下場爆撃、その命中精度からしても対空砲火を恐れない肉薄攻撃だったことは容易に想像がつきます。米軍パイロットも勇敢だったんですね。矢尽き刀折れるまでの「飛龍」単艦での獅子奮迅は胸を打ちます。この大敗から何等の戦訓も引き出せなかった帝国海軍の過誤はあまりにも大きい。2012/08/12