内容説明
21歳の末期がん患者・古林章太郎の激痛を取り除くため外科医の白川は最後の手段として安楽死を選んだ。だが章太郎の母・康代はそれを告発した。殺人か過失致死か。状況は限りなく不利だったが謎の圧力で白川は不起訴に。背後に蠢く安楽死法制定の画策と世論誘導。マスコミを使って阻止を図る康代。白川は困惑しつつも激流に呑み込まれていく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobby
96
さすがの久坂部作品、重いテーマを一気に読ませる。外科医・古川が21才青年の壮絶な苦闘から助けるために苦渋で選択した“安楽死”の決断。それをめぐり違法・殺人を訴求する家族・法律・マスコミ、一方で彼をヒーローに祭り上げる面々。いつの間にやら“安楽死”推進派と反対派のせめぎ合いに翻弄される。そこに現場として必死に向き合った想いは全く重ならない。まだまだ明かされていない“センセイ”の正体やタイトル『神の手』の意味を求めて下巻へ。2016/03/31
アッシュ姉
89
安楽死の是非を問う医療ミステリ。安楽死法の制定をめぐる推進派と反対派の攻防。医師や政治家や官僚の思惑が入り乱れ、日本医師会を解体して新たな協会の発足、医療庁の設置など、相変わらず斬新な設定で読む手が止まらない。日本の医療の支配を目論む真の黒幕は誰か。この先どんな展開が待っているのか、急いで下巻へ。2016/04/11
GAKU
67
安楽死がテーマの作品だが上巻の中盤あたりから、安楽死推進派の団体JAMAや反対派の団体、さらに政治家も絡んできたり、予想していた内容とは違う感じでちょっと中だるみ。下巻に期待。2018/01/08
aqua_33
63
末期ガン患者の壮絶な苦痛に対し安楽死という苦渋の決断をした医師白川。これが呼び水となり安楽死反対派と推進派の間で論争が巻き起こる。無理な延命による患者の悲劇は現役医師久坂部さんが書かれているだけあってリアル…。現行の医療制度にメスを入れるような提案をしたJAMA。それに反対する全日医師会。何だか患者が置いてきぼりにされてる感満載の読後感。《2017年270冊目》2017/12/30
オカメルナ
62
優秀な外科医の白川は、末期癌の激痛に苦しむ21歳の青年・古林を救うために安楽死を選んだ。彼は決して安易に安楽死を選んだわけでない。ところが、母親から殺人として訴えられる。マスコミを巻き込み、警察の取り調べを受け、病院からも疎まれる。四面楚歌の白川を救った人物とは?安楽死、この大きな問題を現役の医師である久坂部氏が読者に問題提起しているようだ。下巻へ。2016/02/25