内容説明
指名手配中の弟の居場所を捜査当局に教えなかった兄は、その行為を責められるべきなのか? 論議を呼ぶテーマの向こうに見え隠れする「正義」の姿とは? 日常のアクチュアルな問いに切りこむ斬新な哲学対話が、世界の見方を大きく変える。知的興奮に満ちた議論は感動のフィナーレへ。NHK教育テレビで放送された「ハーバード白熱教室」の第7回~12回、および東京大学特別授業の後篇「戦争責任を議論する」を収録。
目次
第7回 嘘をつかない教訓
第8回 能力主義に正義はない?
第9回 入学資格を議論する
第10回 アリストテレスは死んでいない
第11回 愛国心と正義 どちらが大切?
第12回 善き生を追求する
東京大学特別授業(後篇)―戦争責任を議論する
特別付録 『それをお金で買いますか』より 序章 市場と道徳
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
124
上下巻合わせて色々なことを学ぶことが出来た! 下巻の方はカント哲学やロールズの考えやコミュニタリアニズム、アリストテレスの哲学を主に触れている。正義について各方面の素晴らしい視点で論じていて本当に面白かった。特にアファーマティブ アクションについては興味深かった。過去の差別を現代の自分たちまでこの罪について背負っていかないといけないのかという問題は今のアジア諸国と日本における戦争責任にも通じるものと感じた。哲学には世界を変える力がある。マイケル・サンデルさんのその言葉に力を感じた!2020/02/25
ころこ
48
カントを引き継いでロールズの正義論までを仮設的契約(社会契約論)として概括する。ここまでの議論は、多元性(リベラリズム)という前提がある。これに対してサンデルは、アリストテレスの目的論を対抗させる。善と美徳の目的論は多元性と相反することに気付く。その上で、サンデルの立場であるコミュニタリアニズムが紹介される。ここで重要なのは、その批判であるリベラリズムを先に同じ位の分量で学習させていることだ。それどころか、批判側のリベラリズムの説明が要点を突いていて、本書の最も読みどころだったりする。そして、コミュニタリ2023/12/03
樋口佳之
36
ここまで話し合ってきた、過去の過ちに対する公の謝罪と賠償に関する問題というのは、今日の政治で、最も道徳的に争われ、解決困難で、議論されてきたものだ。これ以上に繊細で、激しやすく、感情的で、道徳的に衝突する問題はほかにはない/学生さんの発言で、歴史の問題ではない、問題である以上それは現在の問題なんだという主張、正しいな。2020/07/03
ちゅんさん
33
下巻もやや難しく理解出来ないところが多かったが哲学ってそういうものだと思うので興味深く読めればいいのかなと。とはいえ本書はおそらくこういう類の本にしては読みやすく分かりやすいと思う。引き続き哲学系の本も読んで行きたい。2024/02/16
Arisaku_0225
17
(上)を読んでから随分時間が空いてしまったけれど、それでも楽しめた。哲学の面白いところは現代の問題を紀元前の哲学者の考えを交えながら論を組み立てたり、それを批判したりできることだと思う。逆説的に言うと、古代から哲学者が1生涯をかけて取り組んでいるのに、まだ哲学 ー 「正義」とはなにか ー が完成していないのだと(他の学問も「完全完璧」ではない)。そんななかでも、哲学がこの不透明で不明瞭な世界を生きていく中で教えてくれることは、「人は考え続けなければならない」ということなのだろう。2023/07/25