内容説明
厳しい自然条件に見事に適応しながらたくましく生活するヤクートの人々。ロシア語同時通訳としてシベリア取材に同行した著者が、現地でのオドロキの日常生活をレポート。米原万里の幻の処女作、ついに文庫化!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
280
今は亡き米原万里さんによる厳寒のサハ共和国レポート。1985年にTBS取材班の通訳として同行した時のもの。当時は妙齢の35歳。さて、サハ共和国には主としてヤクート族の人たちが住んでいるのだが、このヤクートとは、隣のブリヤート族の言葉で「さいはてのさらにはて」という意味だそうだ。オイミャンコではマイナス71度を記録。彼らのいたヤクーツクの取材中の平均気温がマイナス50度。ただし、こんなに極端な気候だと、人間は単純な思考しかできなくなる(居住者は別)ようで、万里さんのいつもの深くてシニカルな考察は見られない。2014/09/04
kaizen@名古屋de朝活読書会
126
ロシア語通訳米原万里。TBS「シベリア紀行」の取材談。大黒屋光太郎が200年前に訪れたヤクート。サハ共和国。氷は冷たくなるとすべらない。高床式住居。釣り。飛行機が飛ばない日々。想像を絶する世界。写真 山本皓一,写真解説 椎名誠。青を基調にした写真と白黒写真。単行本は清流出版。発見角川。2013/09/14
mukimi
114
約40年前に、米原万里氏と椎名誠氏というユーモアと好奇心の日本代表みたいな2人を含む取材班が現ロシアの世界一寒い地域へ旅した旅行記。忙しない日本の新年度からしばし逃避行読書。圧倒的自然を前に命の危機と隣り合わせ、毒舌やユーモアを飛ばしている余裕がなかったのか、荘厳な気持ちに浸っておられたのか、ヒリヒリする米原節は少なめ。極端に厳しい環境下の人間社会は、男性は肉体労働に、女性は頭脳労働に分業していく、との記載には考えさせられた。余裕があるから滞るけど、限界でこそクリアカットになる問題もあるのかもしれない。2023/04/27
seacalf
88
勿体ぶった言い方はあまり好きじゃないけれど、読書好きで米原万里を知らないと人生を損してると言っても過言ではない。その彼女の初めての作品がこの本。これがとんでもなく面白い。ネタバレしたくないので詳細は書けないが、我々の常識を吹き飛ばす極寒の世界の事象や暮らしかたにもう驚きあきれ果てて笑うしかない。短い時間で読めるので、ぜひご覧あれ。もともと小学生新聞用に丁寧に書かれた文章なので、とても優しくて暖かみを感じる。アキレサンドル・シナメンスキー・ネルネンコこと椎名誠のあとがきも素敵だ。老若男女どなたにもおすすめ。2018/09/11
ちょろこ
85
世界でもっとも寒い土地、の一冊。ヤクート自治共和国。まず北極よりも寒い地があることに驚かされ、寒い→氷→滑るの常識を見事にひっくり返された。マイナス50度が当たり前、マイナス21度を暑いと感じる世界を隅から隅まで文字ではもちろん目でも楽しませてもらえ、大満足。酷寒の地の写真はどれも美しく、どこか幻想さをまとい魅了されてしまう。黒毛の馬も白馬になるほどのヤクート馬の息づかいが伝わってくる写真には一番心をわしづかみにされた。寒さと幻想さは比例するのかも…なんて、ふと思った。2018/10/22