内容説明
漫画原作者の佐紀は、人生最悪のスランプに陥っていた。デビュー前から二人三脚、誰よりもなにもかもを分かちあってきた編集者の玖美子が急逝したのだ。二十歳のころから酒を飲んではクダをまいたり、互いの恋にダメ出ししたり。友達なんて言葉では表現できないほどかけがえのない相手をうしなってしまった佐紀の後悔は果てしなく……。喪失と再生、女子の友情を描いた、大島真寿美の最高傑作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さおり
77
初めましての作家さん。本屋さんで何気なく手に取るという、近年なかった行動により積まれた本です(いつもは読メに頼りまくってるので)。これねー、好きなやつでした。なんかね、川上未映子さんをわかりやすくしていって、そのうち綿矢りささんを通り越して、まだまだ易しくしてったらたどり着く心地いい場所って感じ。つまり、文が長いってことです(何がつまり、だ)。最後、突然終わるんだけど、そういうとこも私好み。まとめがある本が好きじゃないので。帯に「大島真寿美の最高傑作」とあるので、次行くかは迷うとこですけど・・・。2015/02/27
したっぱ店員
55
戦友と呼ぶべき編集者を亡くした作家。彼女のいない世界を生きる、喪失感、無常感をかかえた日常が、やがて「健やかな日々」と人に思われるように。完全に内包されたということなのだろうか。失った彼女には及ばないかもしれないが、後任の編集者ともしだいに戦友のようになっているように思う。それは積み重なっていきながら決して上書き消去ではない。淡々と静かだが滋味のある1冊。2020/06/06
巨峰
52
質の揃った連作短編。友情というより戦友という言葉のしっくりくる2人の女性の話。だか、物語の始まる前に1人は死んでしまっている。残された私はどういきるのか……テーマもいいけど、そこそこ大人の、仕事をしている女性の生活が興味深くたのしめました。2013/03/15
らむり
48
良かった!やわらかくて美しい30代女性の友情小説。どの登場人物もみんなイイ。2014/05/16
kana
47
女の複雑な友情を描いた物語かと思ったら、戦友のような強い絆で結ばれた玖美子を亡くし、喪失感とともに一人、「長い長い喪中」を生きる女性の連作短篇集で驚きました。キャリアを築くまでの仕事の日々も、恋愛も、友情も、あっさり流してしまって、アラフォーになって。「おばさん」と呼ばれて不意に気付く自らのささやかな老い。それでいいのかと読みながら少し不安にもなったけれど、でもそこで終わったりはしない、再び訪れる「潮目」とようやく見つけた細い線、そして絶景に心打たれます。滋味に富む旅館の朝食のような佳作でした。2013/02/16