内容説明
浅草は観音裏、昭和の香りを色濃く残す喫茶店「カサブランカ」。美味いコーヒーと亭主夫妻の人柄に惹かれ、今日もまた、風変わりな客たちがやってくる。芸者の大姐さん、吉原の泡姫、秘密を抱えた医大生……それぞれの複雑な事情がカップの湯気に溶け、そっと飲み干せば少し力が湧いてくる。疲れた心がじんわり温もる人情連作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chichichi
97
とても良いお話でした。浅草寺近くにある喫茶店カサブランカを舞台にした人情味溢れる優しい物語。穏やかに見える日常の中には、心の奥にそっとしまっておきたいストーリーが幾つもあり、そして知らぬ間にその心を優しく解してくれる珈琲の薫りと穏やかな人々がカサブランカにはある。読後、日々を丁寧に過ごしたい気持ちになった。あまりにも有名過ぎて行った気になってしまっているが実は行ったこのない浅草寺に行ってみたくもなった。2015/11/26
紫 綺
78
サイフォンで淹れるコーヒー、大好きです。コポコポいいながら昇っていくお湯、じわっと広がる香り。幸せを感じる時って、こんな時間かもしれません。・・・浅草の下町に在る喫茶店「カサブランカ」を舞台に描かれる人間模様。一人ひとりの背負っているものは重いのだが、読み手の心に温かく浸み込んでいく。もう少し読んでいたい。2012/04/23
まる
53
人に歴史ありという感じですね。それぞれ人生色々ある。そんな色々な人たちが出会い関わり合うのって良いですね。ほっこり、最後はほろりとしつつ。澄江さんが一番好きでした。あんなかっこよくて艶のある女になりたい。若い筈のヒカルの章でもどこか若さが足りないのが気になりましたが…とっくりって…2016/05/10
あじ
46
浅草の風景に溶け込んだ喫茶「カサブランカ」。常連さんたちが抱える複雑な事情を分かち合う、アットホームな空気を醸した老舗だ。ソフトな小説かと思いきや浅草界隈の歴史、花柳界、医学生の学業等、様々な分野に精通した描写が物語に厚みを与えていた。掘り出し物の佳作でした。【言問通りには十日ほど滞在したことがあり、情景を思い浮かべるのが容易かった。「曙湯」いい湯だった。もしかしたら、あの喫茶がモデルかもしれない。】2017/11/17
ゆか
33
連作短編集と、それぞれの人が何かを抱えているという設定は、好みなのだが、心に響かなかった。もう少し、心情の内面を描いて欲しかった。このあと、どうなるの?という終わり方なので続編があるのかな?2016/01/05