内容説明
僕たちは、なぜいつも不安なのだろう。あまりにも純粋だから、あまりにも優しいから? 精神科病棟という大きく甘美なゆりかごで、夢と妄想の世界に浸る記憶喪失のうつ病患者のこころの揺れを鮮やかに描写した傑作小説。患者たちの日帰り旅行の提案を受けても、煩わしくて気乗りしない主人公に訪れる変化とは。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばいきんまん
15
'14.6-5(94)懐かしかったです。規則とか、開かない窓、鍵の掛かった扉、保護室。精神科ではよく「頑張らなくていいよ」「ゆっくりでいいよ」「無理しないで」と言われる。世間から見るとただの甘ったれた世界なのかもしれない。でもどちらが正しいと言うんじゃなくて、「頑張る生き方が合う人」「のんびりな生き方が合う人」なのだと思う。のんびりと始まるこの本、最後が一気に展開したのには驚いたけど。どの人も優しい。2014/06/06
S.Mori
13
心の病に苦しむ人の内面を踏み込んで描いた傑作です。涙なしには読めないところがありました。物語が進行するにつれ、どうして主人公の柴垣がうつ病になったのか分かってきます。他の入院患者の行動や心境も描かれて、読んでいて苦しくなることもあります。「人生で誰もが間違いを犯す。普通の人はそれをやり過ごして生きる。でも心を病む人は純粋さゆえにやり過ごすことができない」作中に出てくる主人公のこの思いに深く共感します。自分も病気なのに患者を必死に救おうとする看護師相場さんは、忘れがたい登場人物でした。2019/10/30
Sato
11
海辺で読書をしながら夕陽を見ると思い立ち、途中の本屋さんで手に取った本。心の病気にかかってかつ記憶も無くした人が主人公。うーんチョイスを間違えたか?ラストはなんとか解決したが病んでる人への接し方って難しそうという印象でした2019/09/19
惠
5
精神病院のお話。入ったことないけれど、思っているよりは普通なのかもしれない。特殊と言われる場所でも、そのコミュニティなりの作法や礼儀があって郷に入っては郷に従えが正しい対処法なんだろう。語り部の柴垣さんなんて一見、何を病んでいるのかわからないほど冷静でバランス感覚に優れている。でも日常のちょっとしたことで色んなバランスが崩れて思ってもないところに行っちゃったりするんだろうな。きっと紙一重。でも向こうから現実社会に戻る境目は、深い。なのにラストは案外あったかかった。2012/02/13
yamakujira
4
鬱病を患い、記憶喪失となり、精神科へ入院している柴垣が生活する、病棟での日々をえがく。重症患者がいない病棟なので、人格が崩壊するほどの疾患を見ないですむのは救いだな。精神科に舞台を借りることで、患者の異常性を笑うよりも、かえって「揺り籠」の外の異常性を考えさせられた。相場さんの病気から流れこむラストの展開があわただしく、一気に現実に引き戻される心が切ない。生きたい相場さんと死にたい柴垣の対比に、人智を超えた運命を感じるね。深読みしすぎかもしれないけれど、いろいろと心揺さぶられる物語だった。 (★★★★☆)2014/08/26
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