内容説明
千四百年前、淡路島にたどりついた1本の流木を島人たちが火にくべたところ、得も言われぬ芳香が。仏教とともに伝えられた「香文化」を知る聖徳太子は「香木」だとすぐに見抜いたといいます。そして千年前、『源氏物語』の時代に人々は「香」で愛情を伝えました。鎌倉時代の武家は香木を兜に焚きしめ、室町時代に香は「香道」という芸道になりました。世界が賞賛する日本文化「香」の物語を、「香文化の伝道師」がわかりやすく綴る癒しのエッセイ。
目次
第1章 香と歴史の物語(クレオパトラの香りと香水のはじまり;香りの塊、香木;天につながる祈りの香;祈りから雅びの香へ;「一木を愛でる」武家の香;武家の香と公家の香の融合によって生まれた「香道」;伝説の銘木「蘭奢待」の数奇な物語;江戸時代、町人にも知られる香の雅び;鹿鳴館の夜、四千年目の出会い)
第2章 香と文学(清少納言の香リラクゼーション;紫式部、登場;『源氏物語』は香の物語;紫式部の愛読書『宇津保物語』;紫式部が香に託して後世へ残したテーマ;「香道」とは知遊美の総合芸術;「源氏香」その驚きの仕組み)
第3章 香と生活(「香十徳」―香は人に徳をもたらす;香で「しつらえる」ということ;お線香は天国への携帯電話;「香染」―香りから色を、色から香りを生む;香の未来のステージ;気軽に香を楽しむ今の世の人たち)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
紫羊
26
わかりやすくて面白い香の入門書です。聖徳太子の時代に、初めて香木というものが日本に伝わり、その後、紫式部によって源氏物語が書かれた頃には、すでに素晴らしく洗練された香文化が確立していたことに、今さらながら香と日本人の相性の良さに驚かされます。他にも書かれている方がおられますが、本当に、また源氏物語を読み返したくなりました。2014/11/27
風花
10
インド発祥の香りの文化が、長い年月をかけどのように花開いていったかを軸に、歴史や文学への関わりや日本における香文化の移り変わりを、とてもわかりやすく面白く学ぶことができました。中でも興味深かったのが、徳川家康・佐々木道誉・織田信長・細川忠興・伊達政宗などの香木伝説と、源氏物語における香の重要な役割について。特に源氏物語は、まさに『香の物語』ともいえるほど香が重要なキーであることを知りました。これを読んだ後は、更にあじわい深く源氏物語を読めそうです。2017/02/11
coco.
7
創業430年『香十』代表によるお香のエッセイ。日本の三道(茶道・華道・香道)の内、あまり知られてない香道。文章自体は桐生操さんと同じく易しめ。二年前から私は香りに関する分野に興味を示し、一昨年に奈良博の正倉院展で伝説の蘭奢待が数十年ぶりに公開すると聞けば、現地まで赴いた。下鴨神社では御香守りを、今年は東大寺で香袋を購入。理解出来ない人には、若々しい趣味では無いとも言われるが、和の香りは心を鎮め安らかにさせる。既に気軽に香りを生活の中に取り入れてはいるが、やはり本格的に焚き上げ漂う香りは別物だ。2013/05/20
櫛部晃季
7
インドから発して東西に分かれ、東の端、日本で平安から室町にかけて洗練され、江戸時代に庶民の中に浸透して行った香道を分かり易く説明してくれる入門書の様な内容。西へ行った「香」がヨーロッパで香水になり、日本で最終形になったお香が明治維新後、鹿鳴館で再び出会い影響し合って行く流れは壮大で浪漫溢れる。源氏物語を香道の視点から読み、情景をより深く理解していくのは面白かった。香りが日本人の中に自然に浸透していたのに、今は忘れられつつあるのが勿体ない。カルチャースクール等だけでなく、もっと広く認知されると良いと思う。2012/10/21
rei
6
源氏物語の梅枝の香競べは昔から好きなシーンだったのだけれど・・・。明石の御方の薫衣香にはそんな思いがこめられていたか・・・。あらためてぐぐっときてしまった。日本の香りのとらえ方って「香り」そのものだけではなく、そこから連想され、ひろがっていく様々のことが興が深く、また愛おしいのかもしれない。そろそろ夜の闇が花の香りになる。梅が香ると肌にふれる空気はまだまだつめたいのに脳が「春」を感じてほっとしてしまうのだ。2012/02/09




