内容説明
25歳の広田と岸、佐々木、26歳の別所、27歳の魚住と津留崎。6人は、大きな会社の中の小さな班「夕日テレビ班」で毎日深夜まで地味な仕事をしている。(ちなみに非正社員が3名、正社員が3名)恋人でも友達でもない、立場も微妙に違う、けれど同じ職場の同僚として会話を交わし笑いあう。仕事を詩的に描いた著者初の「職場小説」。平等とは何かを問う『ああ、懐かしの肌色クレヨン』も収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
masa@レビューお休み中
94
久しぶりのナオコーラにたじろぐ。処理できずに苦戦してしまう。それは、既存の小説に慣れすぎてしまったからなのかもしれない。リハビリするように少しずつ慣れて馴染んでいくと、心地よさを取り戻す。不器用な人たちの実直で真面目なお仕事小説である。彼等の仕事は、ラジオテレビ欄を作ること。新聞に掲載されているあの一覧表を作る仕事である。緻密かつ地味な作業の中に埋没するかのように働く人々。彼等の喜びと哀しみと絶望がここには描かれている。2016/11/04
tokotoko
53
みなさん!「夕日テレビ班」のお仕事風景をのぞいてみませんか?"テレビ"がつくからって、華やかな職場!・・・ではないです。6人の小さな班。お仕事内容は地味!山はなく、ひたすら日常と・・・"谷"はありました!でも、きっとのぞいてよかったな、って思われると思います。ものすごく自分の近くまで来てくれる文章です。あと1編は、何だか変てこなタイトルのお話。こちらは、パン工場で働く2人の物語です。切ないけれど、どこかのんびりしていて。何気ない日常の空気が大切に封じ込めてありました。2016/03/10
阿呆った(旧・ことうら)
31
< 生きるのが面倒なのは、不幸だからではなく、生半可な幸せと耐えられそうな不幸が交互に訪れるからではないだろうか。> 同じ職場で働く人の日常系。 ◆「はぐれ刑事純情派は本当にはぐれているのかな?」等、ナオコーラさんは、セリフに独特のセンスがある。◆解説は羽田啓介。ナオコーラさんの文が<男性的>と指摘する点、登場人物の発見するそれぞれの「真理」の間を成すものが、発生しては消える会話だという指摘に同意。2015/09/30
吾亦紅
29
「夕日テレビ班」はほとんど同じくらいの年の6人が働く小さな班。正社員3人に非正社員3人、男性4人と女性2人。視点は次々と入れ替わるが、主に広田(男性、非正社員)と岸(女性、非正社員)で語られる。友人でもない恋人でもない、仕事仲間同士のやり取りの中だからこそ、矜持であったり自尊心であったり、思いやりであったり、人となりが表出する。そんな様子が散文詩のように描かれていた。残業で皆が疲弊している中、広田の「ジューシーってなんですか?」発言は、絶妙なタイミングだった。語られることのない広田の鬱屈と、彼の地平を思う2021/02/26
coco夏ko10角
28
夕日テレビ班、職場小説。他の作品と改行の仕方がちょっと違っていてページによっては詩のように。職場でのささいな会話と沈黙の時間。そして『ジューシー』とは?確かに。2017/02/27