内容説明
栄光を勝ち取るか、無残に打ちのめされるか、これはもう遊びではないのだ――。夫の浮気が原因で離婚、娘の小織とともに実家のある名古屋へと転居し、無気力な日々を送っていた藤里梨津子だったが、フィギュアスケートの名コーチに小織の才能を見出され、娘を支えることに生きがいを感じ始める。「藤里小織の最大の伸びしろは、あなたにあると思ってます」とのコーチの言葉に、娘のためにすべてを懸ける決意をする梨津子。スケートクラブ内の異様な慣習にとまどい、スケート費用の捻出に奔走し、さらには練習方針をめぐってコーチとの間で軋轢が生じるのも厭わず、娘のことだけを考えてクラブの移籍を強引に進める――そんな母の姿に葛藤を覚える小織ではあったが、試合での成績も次第に上がっていき、やがて……。母娘の挑戦は、実を結ぶのか?母と娘の絆をテーマにした、著者渾身の長編小説。『犯人に告ぐ』『クローズド・ノート』をしのぐ興奮と感動!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
takaC
111
何だろう。パロディなのかな。面白かったけど読者を選ぶのではないだろうか。2012/12/11
しろいるか
111
“フィギュアスケート版・巨人の星”とでも言いましょうか。栄光の舞台を目指す母娘の戦いの日々を描いた作品。娘・小織ではなく母・梨津子の目で描かれている場面が多いのが目新しい。読んでて感情移入しやすかった。輝く銀盤上、注目されるトップスケーターはほんの一握りで、その陰には本人も家族も壮絶ともいえる努力をしても報われない選手が数多いることを改めて思った。衣装や振付、練習、海外渡航など経済的負担もリアルに伝わった。前向きなラストも良い。あと、希和が浅田真央ちゃんとかぶって仕方なかった。2012/11/21
ひめありす@灯れ松明の火
97
あどけない表情の少女も、誰もが認める聡明なお嬢さんも、銀版の上では姿を変える。光よりも清らかに、白鳥よりも嫋かに、魚よりもしなやかに、空気よりも軽やかに。もっともっと花よりも華やかに、妖精よりも可憐に、音楽よりもにおやかに。そんなものじゃ足りない。目指すのはそう頭上に銀色の星の冠を煌めかせるたった一人の銀盤のクイーン。その道は細く複雑な一本道、決して後戻りのできぬ道。道を違えても、途切れてもそこでおしまいとなる華奢な道のり。何もない鏡面に母と娘、二人紡いだその軌跡はやがて祈積となり輝石となり、奇跡となる。2012/04/17
ダイ@2019.11.2~一時休止
88
スポーツ物なんで篠子が出るのかと思いきや出てこず、ミステリー色は弱いけど面白かった。2014/05/20
パフちゃん@かのん変更
87
雫井氏初読みです。フィギュアスケートに取り組んだ少女と母の話。出だしからもう少女にとってスケートは過去のものとなっていて、学費の安い田舎の公立大に通いボロアパートに住む少女が友達にスケートの思い出を語るという形。フィギュアスケートは才能も勿論だが、お金もかかるし、親の支援も並々ならぬものがある。小織の母がその中に生きがいを見つけ成長していったのは素晴らしい。ミキティや真央ちゃんを思い浮かべました。2015/08/20