内容説明
幼少時の空襲体験で初めて目の当たりにした“人間の死”、敗戦直後に逝ってしまった兄と父、ジャーナリストとなったのち調査報道を通して向きあった大事故や災害の被害者たち、尊厳死、「がん」で死ぬということ、そして次男の自死――。幾多の死を見つめてきた著者が、自らとのかかわりを振り返りながら綴った渾身の一冊。
目次
1 私の「生と死」の原風景―小学生時代から大学生時代まで
2 「自分の死を創る」時代への気づき―四十歳代の死生学事始め
3 私の尊厳死への思い
4 息子の自死に直面して―五十七歳の夏の衝撃
5 河合隼雄先生から学んだこと
6 この困難な時代の中で
7 「色即是空」との歩み、そしてこれから
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けぴ
44
P122 QOLに対して新しいキーワードQOD(クオリティ・オブ・デス) 死にゆく人の「死の質」つまり「よりよい死」を確保することの重要性。救命がもはや無理とわかったら、ベットサイドを家族に開放する、よりよい看取りの演出をする。→こうすることで、「二人称の死」、すなわち親兄弟や子の身近な人の死を、残された家族が受け入れる時間を提供することができる。それが出来ると「納得できる死」としてこころを癒せる。様々な死をライフワークとして長年取材し、また次男を自殺で失った経験のある柳田邦夫さんの総決算的な本でした。2020/10/04
金吾
20
○どのように生き、そして死に対面するかのヒントを示唆されたような気になりました。身体的命と精神的いのちの話や死後生の話は考えさせられる話でした。2024/08/26
バナナフィッシュ。
5
この人の人生、どんだけハードモードなんだ。さらっと流すけど、おいちょっと待て、愛する妻が20年も寝たきりで、次男が発狂の上、自殺。離人症で済んだのが凄い。この人が書く、闘病人たちよりよっぽどだ。死を本当の意味で直視できている、そんな雰囲気が文章の端々から立ち昇っている。2017/05/01
Sugaya Masaki
3
「手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が」を読んだ時に死に対する怖さとか河野自身の無念さみたいなものよりも、生の充実を感じるのは私だけではあるまい。辞世の瞬間に発せられる言葉にこそ、生が詰まっているのかもしれない。2017/10/10
とんがりまめ
2
癌で死にたいという著者。何だよ代わってくれよ。…というのは冗談だが、狂いそうな日々の中で、そう遠くない将来に私は死ぬのだという事実にだんだん慣れていく自分がいる。その日の後に家族と対話するために、何を残したらいいかを考えるとき、何故か落ち着く自分もいる。ジタバタする時間があるのは幸せなことだ。天国の住人になっても、家族の成長とともに家族の中で膨らんでいく存在でありたい。そして生きられる間はジタバタ生きたい。2012/10/18