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内容説明
誰のための国家か? 何のための国家か? 人は生まれながらにして生命・自由・財産を守る権利があり、国家の成立は、この人権を守るための人々の合意に基づく。王権神授説を否定し、最高権力を人民の信託によるものと説く社会契約思想は、のちのアメリカ独立宣言、フランス革命を支える理念となった。自由、民主主義を根源的に考えるうえで必読の書である。
目次
自然状態について
戦争状態について
隷属状態について
所有権について
父権について
政治的社会、すなわち市民社会について
政治的社会の発生について
政治的共同体と統治は何を目的とするのか
国家の各種形態について
立法権力の及ぶ範囲について
国家の立法権、執行権、外交権
権力相互の上下関係
君主の大権について
総合的に見た家父長権力(父権)、政治権力、専制権力について
征服について
簒奪について
専制について
統治の消滅について
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
molysk
37
ロックは、イギリスの哲学者、政治思想家。市民政府論において、人間が生まれながらに自らの生命・自由・財産を保全する権利を持つこと、および国家の目的はこれらの権利を守ることであると主張した。17世紀後半のイギリスは、清教徒革命に続く王政復古で政情が不安定であり、背景に絶対王政への中間階級の挑戦があった。ロックの思想は社会契約を主張して、王権神授説を否定することにあった。1689年、名誉革命。権利章典に立憲君主制の礎が記された。世界でいち早く市民革命を達成したイギリスは、近代資本主義社会への一歩を踏み出した。2020/04/05
ころこ
31
①「解説」で訳者は、戦後のアメリカ思想の流入と、更にノージック『アナーキー・国家・ユートピア』によって遡行的に読まれるようになったと述べています。その通り本書を先に読んで『アナ』に向かった方が、理解が上手く出来たと思います。特に『アナ』第1部は本書を意識して、自然状態から社会をつくるのに現代的に「保護協会」を挟んでいたことがより明確になるので、『アナ』を読む助けになると思います。②加藤節訳『統治二論』が手許にあるので読み比べてみると、まず、明らかに第1篇が重く、重要な『市民政府論』である第2篇に辿り着かな2021/05/29
巨峰
30
市民政府論の両脇に大日本国憲法と日本国憲法を並べて見比べてみると、日本国憲法がロックの思想の濃厚な影響を受けて編まれたものだとよくわかる。自由主義民主主義社会の聖典と言っても言い過ぎでないこの書を私たちはあまりにも知らなすぎる。法律を、政治を志すもの、海外の人たちをと修好をはかる立場にたつものは、血肉になるまでくりかえし読むべきだ。訳も素晴らしいと思う。2014/08/26
加納恭史
23
札幌も今年は暑いので、少しボーとしたが、ゆっくり読めた。奥深いのでユーチューブも参考に吟味が必要な書物。古来プラトンの正義論や正義が侵害されて義憤は当然だとか。しかし都市国家内の正義と義憤から、複雑な要素を含む近代国家では自由・平等・財産の保障は容易ではない。古来からのキリスト世界では不法にも権利が侵害されたときは、訴えるところがなければ、神に訴え、祈る他にない。ここに人間の抵抗権の発生の意味がある。この世に司法権や訴訟の調停がなければならない。裁判所の役割が大い。近代にやっと慣習から実定法が定められた。2023/08/10
ヒロキです
18
民主主義や自由主義について解説したロックの市民政府論。「やられたらやり返すことは可能」とする秩序ある自然状態から安全を求めて公共体が必要とする人間の素性から国家が出来たする理論は、しっかりと筋だった理屈を感じさせなるほどなと思わされた。当時の王権神授説について論破できるものだなと思った。またロックの罪を犯した者は獣同然とする言い分は痛快だった。非常に分かり易かった2020/04/02