内容説明
「ゆうどう……からく」、父の戒名を呪文に唱えれば、長脇差小松五郎が電光一閃。吉良の仁吉一家、清水の次郎長一家、穴太の徳次郎一家相手に大立ち回り。しかし、「ええじゃないか」の歌とともに現れた相楽総三、新撰組、西郷隆盛、岩倉具視――。真意は明かされず討幕の戦いは進む。渡世人から見た幕末維新の群像を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ペペロニ
8
痛快な股旅物だった上巻に対し、下巻は悲壮な話へとシフトしていく。龍次は維新の波に巻き込まれて満身創痍になり、全幅の信頼を置くヒゲ万先生のことも信じられなくなっていく。終盤15ページ分の展開は、山田風太郎節炸裂で全部持ってかれた。2021/02/10
Katsuto Yoshinaga
4
エンタメ感が強かった上巻からの勢いで下巻にとりかかったところ、何やら雲行きが…、と思っていたらば、案の定、泣けた。編者解題で日下氏が書いている通り、悲壮美たっぷりである。また、解説で縄田氏が指摘しているように、山風先生は、庶民の側によって作られる歴史-『稗史』の視点で、物語を紡ぐ。本作は後半から維新と関わり、正史と絡みあっていく。縄田氏が言うように稗史と正史は悲しく絡みあうのである。なんてことを書いているが、本作は脳天気と悲しみが味わえる、一級品の幕末活劇小説でもある。「るろ剣」が好きな方は楽しいかも…2015/07/18
まりこ
3
上巻の能天気な活躍から、陰りが始まり痛ましい結果にむかう。幕末の色々な事が崩壊していく中、遊侠の道を立てて生きる事は難しい。ヒゲ万との距離が離れていく感じも寂しい。官軍も色んな犠牲がある。解説も分かりやすくて良かった。2013/11/19
西村章
2
「にっぽんをとりもどしゅ!」と勇壮な愛国心に満ちた方々が語りたがる正史の足許には、その〈正義〉に翻弄され使い捨てられてゆく者どもの屍山血河が累々とひろがっているのだよ、という、そういうお話。痛快幕末股旅モノの軽快なトーンから哀切に満ちた虚無感へ移り変わってゆくグラデーションが、風太郎史観の真骨頂。2014/03/06
makka
2
下巻に入りこれまでのあっけらかんとした渡世人同士の戦いが一変。蛇遣いの香具師の登場で忍法帳シリーズのような怪しさ。京都編はさらに一変し志士と新撰組の戦いに巻き込まれ、昨年の大河では完全無視された会津小鉄が敵役で登場。ラストシーンは悲壮感漂うも、名画を眺めているような美しさ。生きのびた小鉄が3000人の手下を抱える大親分になるのも歴史の皮肉。2014/02/06