内容説明
戦慄のバラバラ殺人──汚れた言葉とともに全国で発見される沢野良介の四肢に、生きる者たちはあらゆる感情を奪われ立ちすくむ。悲劇はネットとマスコミ経由で人々に拡散し、一転兄の崇を被疑者にする。追い詰められる崇。そして、同時多発テロの爆音が東京を覆うなか、「悪魔」がその姿を現した! 2000年代日本の罪と赦しを問う、平野文学の集大成。芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
233
人は誰しも社会的な存在であることから免れることはできない。そして、通常は幾分かの違和と、同時に親和性とを持って日常を送っている。いわば共同幻想の中に安住しているのだ。それが、ある時、他者の悪意、あるいは予断や思い込みから、そうした社会から徹底的に疎外されてゆく状況が出来するかも知れない。崇が置かれたのは、まさしくそのような状況だった。まして、メディアがマスからネットへと無限大に拡大した今、その疎外もまた空間的にも時間的にも、どこまでも肥大化してゆく。一旦、掛け違えたボタンはけっして元には戻らないのだ。2015/05/02
bunmei
124
屈折した世界観を持ち、弟殺しの犯人として浮上した崇。その物語と同時に展開するのが、いじめられっ子の中学生・友哉の異常なまでの言動といじめへの復習劇。そして、友哉の前に現れたのが、あるサイトを通して知り合った「悪魔」の様な1人の男。全く接点のなかった2つの物語が、ある恐ろしい関係に発展します。題名の『決壊』の示す通り、全てが崩れ落ち、救いようがないような結末へと進んでいきます。あまりに描写が過激でグロく、読むに耐えない部分もありましたが、次の展開が、どうなるのか気になり一気読みでした。 2019/11/07
遥かなる想い
111
ネットのリアルと現実の恐怖を描きながら、バラバラ殺人の「悪魔」を描き現代社会の闇を描写した作品の下巻。被疑者にされた実兄の心情を描いてはいるが、話の興味はどうしても真犯人探しにいくため、読み込むという感じではなかった。ネット社会のひずみのようなものをもっと書き込みたかったのだとは思うが。 2011/06/18
s-kozy
83
被害者親子、加害者親子。悲劇をもたらすそれぞれの母子関係。次世代に様々な影響を及ぼす母と子の物語として興味深く読んだ。悲劇的な結果を見たのは父親の存在感の薄さ故なのか?2016/09/03
優希
67
汚れた言葉と共に紡がれる悲劇と言えますね。人々はあらゆる感情を奪われるのに鳥肌が立ちました。罪を匂わせていた「悪魔」が遂に姿を現したと言ってもいいでしょう。「決して許されない罪」から見つめる孤独が体に突き刺さり、痛みを感じずにはいられませんでした。罪と赦しを問う問題作ですね。2021/08/19
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