内容説明
パリ滞在に材をとった西洋読物、大戦後の世相小説、古代史物語、幕末物、戦記物…。華麗なる文体を駆使して展開されるめくるめく小説世界。「小説というものが、無から有を生ぜしめる一種の手品だとすれば、まさに久生十蘭の短篇こそ、それだ」(澁澤龍彦)。この姿勢で貫かれた作品は、いずれも常に新しく、読み巧者の期待を裏切らない、文学の金字塔である。「ヒコスケと艦長」「三笠の月」「贖罪」「川波」など、痛快無比の傑作群。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
48
十蘭はその物語の登場人物に対して誰それはこうであろうといった決め付けはしない。ある種そっけないようなどちらかといえばこうでもあろうしそうでもあろうというその肯定の姿勢は突き放したようにとも感じられる客観的な筆使いに表現されることでそこに描かれた人物が深みのある現実の人として立ち上がってくるのだ。出来事は単純でいてその奥が深く感じられる。そこが十蘭の小説の魅力と言えるのではないだろうか?2015/05/19
mii22.
44
アンソロジー本での掌篇がとても好みの作品だったのでこちらの短篇集を読んでみた。書かれた時代は古いのだが「仏蘭西」という響きが似合うシャレていて新しさを感じる部分もある。くるっと回すと姿形を一瞬にして変えてしまう、まさに万華鏡のようなような読み心地。お気に入りは「花束町一番地」「花合せ」。オチのセンスが「あら、まぁ」という感じで好き。2016/12/12
小夜風
26
【所蔵】久生十蘭(ひさおじゅうらん)という人を初めて知りました。どうしてこの本を手にしたのか思い出せないのだけど、面白かった!戦前か戦時中の話が多く、戦争の影が色濃いのだけど、どのお話も何だかモダンでユーモアがあって、想像したら物凄く悲惨な状況なのに、登場人物がみんなキュートに思える不思議。えっこの後どうなるの!?と気になるところで悪夢から覚めるみたいにスパッと終わってしまうのも、いっそ潔いくらい。生と死が常に隣り合わせな、こんな時代があったのだと…十蘭の手にかかればそんな時代もファンタジーのようでした。2016/12/22
ふじみどり
16
1ダースの珠玉作品が次々に像を結び移り変わっていく。読者は万華鏡をのぞく子供になって心をときめかせる。パリの街角に咲く色とりどりの花のようなお嬢さんたちの賑やかしさ—『花束町一番地』。大人の色気としおらしさがはぐらかされる結末が心憎い—『花合わせ』。異国の地で縄にかかった露西亜人艦長の前にどんぶらこっこと小舟に乗ってやってきた愛想のよいちんちくりんの真意とは—『ヒコスケと艦長』。この3編は特にお気に入り。2012/05/24
御座候。
9
作風が広くクセになりそうな面白さ。短編集。2022/11/17
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