内容説明
安政七年(1860)三月三日、雪にけむる江戸城桜田門外に轟いた一発の銃声と激しい斬りあいが、幕末の日本に大きな転機をもたらした。安政の大獄、無勅許の開国等で独断専行する井伊大老を暗殺したこの事件を機に、水戸藩におこって幕政改革をめざした尊王攘夷思想は、倒幕運動へと変わっていく。襲撃現場の指揮者・関鉄之介を主人公に、桜田事変の全貌を描ききった歴史小説の大作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
462
文体、小説作法は歴史そのものに語らせる方法をとる。したがって、登場人物たちの感情表出はきわめて控えめであり、というか直接語られることはほとんどない。主人公は特定しにくいが(これもまた、そういう手法の一環であろう)、第9代水戸藩主徳川斉昭、藩士の関鉄之介、そして敵役の井伊 直弼か。嘉永6(1853)年のペリー来航以来、幕府はもちろん世情は騒然。井伊は独断で条約の締結を図る。水戸藩をはじめ、京都の朝廷や公家、薩摩藩などの諸藩でも大きく揺れ動いてゆく。まさに、「歴史が大きく動く時」であった。2020/12/22
yoshida
150
誰もが知る桜田門外ノ変。時の大老である井伊直弼が襲撃殺害される。安政の大獄での苛烈さが引き金か。実態としての背景を詳しく知らず本書を読了。契機はアメリカの砲艦外交。所謂、武力での恫喝がある。世界史的な要因は欧米列強の植民地支配だ。翻り日本を見れは、植民地支配を退ける思いは全ての人々に共通する。当然だろう。後は考え方の相違。尊皇攘夷の急先鋒である水戸藩。だが欧米列強との武力差に、現時点での攘夷は無理とし開国する幕府。国を思う気持ちは共通。井伊直弼は水戸藩を追い詰め過ぎた。融和の道はなかったか。欧米は災厄だ。2021/04/13
みも
144
史実を忠実に描いた歴史小説。著者ならではの客観性は安定の筆致であるが、井伊直弼暗殺実行部隊の指揮者・関鉄之介の視点で描かれる為、どうしても水戸藩の苦悩・憤激がメインとなり、彦根藩の視点で見た場合は全く違った景色になるであろう事は念頭に置くべきだ。それはそれとして、極めて綿密な調査が為され執筆された事も容易に推察出来る。数十名の実名羅列には著者の執念すら感じる程。水戸藩・尊王攘夷派に対する大老の苛烈なまでの弾圧に、水戸藩改革派が為す術も無く麻縄でじわじわと首を絞められるように追い詰められていく様が痛々しい。2025/01/13
ehirano1
137
登場人物多しでドロップアウトしそうになるも、まるで水戸藩が暴発するように仕組まれたかのように「個人の感情」ではなく「政治の力学(というデータ)」によって追い詰められていく様子と後半からの暗殺計画の具体化と緊張の高まりが本書からの脱落を許しませんでした。そして関鉄之介という「静かな狂気」が成功しても死、失敗しても死という状況を受け止めながら、「歴史の流れ」を止められないと悟っていく描写が印象的でした。2026/03/14
ケンイチミズバ
132
開国を拒み結果、強大な武力で乗り込まれることは植民地化を意味し、ここはやむなく条約を結び平和裏に開国するしかないという冷静な判断は直弼が政治家だからだ。刀を腰に差した武士には通用しない。しかし弱腰外交とか売国行為とか口ではいくらでも勇ましく言えるが、実際に力で対抗してしまっていたら日本の形は今とは異なっていただろう。大老直弼の考え斉昭の考えも正しいのだがハリスとペリーの動きが早すぎた。この時の要人たちの判断や動きに後の人々は学ぶべきところがある。外圧による右往左往は仕方ないし日本人らしいなと思った。2017/10/19




