内容説明
東京地裁の判決は、2人の被告の明暗を分けた。毎朝新聞記者の弓成亮太は無罪、元外務省高官付き事務官・三木昭子は有罪に。その直後、弓成は新聞社に退職届を出し、とある週刊誌には昭子の赤裸々な告白手記が掲載された。傷ついた弓成の妻・由里子はある決意をかためる。判決後、検察側はただちに控訴。「知る権利」を掲げて高裁で闘う弁護団の前に立ちふさがるのは、強大な国家権力。機密は誰のためのものなのか? それぞれの運命が激動の渦に巻き込まれる第3巻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
zero1
99
弓成はどうすべきだった?日米の密約を放置?外務省機密漏えい事件は地裁で判決が出る。明暗が分かれた三木と弓成。さらに「週刊誌判決」も。三木は魔性の女?新聞記者として休職になっていた弓成は決断する。この巻でも妻が不憫。九州に帰ったが、そこでも彼に厳しい現実が待っていた。高裁、最高裁と進む法廷闘争。弓成の堕落ぶりにため息。「上級審は保守的」というのは共感した。これまでは多くの場面が東京だったが、最終の四巻は違う。山崎が描きたかった戦争とその後が出てくる。間違ってはいけない。これは事実を基にしたフィクションだ。2019/08/23
ユザキ部長
67
ここまで来ると国家の陰謀でしかないのでは?最高裁への上告は棄却。有罪判決のまま。無為に過ごす日々。次は?2017/05/05
修一朗
50
第3巻,緻密でぶ厚い裁判シーンが続く。この部分だって膨大な資料の一部しか使っていないに違いない。そそのかし罪を争点とする検察。知る権利を主張する弁護側。本筋論とのズレを感じつつ,判決。弓成がヘタ打って多くの人の人生を狂わせた事実のみ残る。山崎作品は実在の人物が特定できる。今回も対照リストを作って読んだ。横路さん,ナベツネなど存命の人がいてヒヤヒヤするけどいつものこと。弓成の最大の失敗は横溝にコピーを渡したことだが,史実ではこの事件で横路さん(横溝)お咎めなし。本人は衆議院議長にまでなっちゃった…2014/04/27
菜穂子
43
上告審での敗北は報道の現場に再び立つことが出来ないほど打ちのめされるものだった。妻の生き方とその後の家族の苦悩と葛藤は言葉に尽くせない。そんな中で子供たち守り、母の愛の元、成長した子供たちには賞賛しかない。2023/10/29
Mark
43
最高裁は上告棄却、ついに刑が確定し弓成は有罪。お話では三木昭子に対するそそのかしということであるが、三木は自分をなぜあそこまで貶めるよう虚言を吐いたのか。しかもそれが三木への同情という形で世論が作られてしまう。世に正義を問うはずの報道記者が世論はそう見ない、皮肉としか言いようがない。何が正しいことなのであろうか。権力とは一体何であろうか。物事の本質を見極めさせられる、そんな気がします。2014/08/10