内容説明
幕末・明治の戦乱を駆け抜けた男の生涯! 江戸でイギリス式の操銃法を学んだ村田勇右衛門は薩摩藩砲術師範役として「村田流」を名乗る。しかし、倒幕に動いた薩摩藩は兵を挙げ、勇右衛門も外城士一番隊を率い、鳥羽・伏見から長岡、会津へと転戦する。維新後、薩摩領内の若者に射撃術を広めていた勇右衛門だが、西郷隆盛とともに上京、日本独自の新銃開発に挑む。近代「もの作り」の元祖を描ききる渾身の巨編!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スー
20
92戊辰戦争では新潟から会津を目指す軍の前線指揮官として活躍、終結後は念願のヨーロッパ留学を果たし西南戦争で重傷を負いそして国産ライフルの実用化にこぎつけ日清戦争に突入していく、こんな流れで進んで行きますが技術屋としての能力だけではなく指揮官としても狙撃手としても優れヨーロッパではランドセルや濾過器を購入するなどし先見の明もある事を証明している。狙撃手としてヨーロッパでは世界一と絶賛される技量を持っている事で西欧の銃は日本人には合わない為に日本人に合った銃の開発を目指す。しかし嫉妬する長州閥による妨害が2022/10/22
月式
2
おそらく日本という国の在り方にも大きな影響を与えた国産近代銃開発の最大の功労者にして、当時世界最高クラスの狙撃手であった村田経芳の名を刻み込む素敵な作品。2014/09/30
有海2000
1
「卒」「卒族」を連呼する士族連中の選民意識とか、昭和にい至るまで変わらず続く各藩、各地域間の反目・憎悪意識が誌面に溢れていて読んでいて頭痛がしてきた。加えて「菊御紋」「抜刀隊」の件とか薩軍将校の「精神的劣化」を見てると、昭和陸軍の崩壊へと続く一本の道が明瞭と見えてくる思いがする。その論理的帰結を前にしたら村田の大事業なんて正直些事にしか思えなくなってくる。なんともやりきれない読後感。2022/03/04
えるまぁ
0
銃に造詣が深い氏が書くだけに、村田銃の開発者村田経芳の物語もさることながら、幕末~明治初期の銃に関しての記述が興味深い。また、小説でありながら伝記的な部分も多分にあり、村田が日本にランドセルを紹介した、という説などを紹介している。作者の東郷氏は日本人としては初めてAKで撃たれた人なんだけど、そんな逸話、知ってる人はあまりいないかもしれない。2012/07/08
punyupunyu
0
明治維新期の銃士・銃技術者、村田勇右衛門に焦点をあて、近代銃開発史を詳細に描いた小説。同時期に主題となる人物、テーマは数多くあるなかで、希少な主題に取り組んでおり、かつ重厚な内容は膨大な調査・取材に基づいている。読みごたえのある作品だった。2011/02/10