内容説明
ろくでなしでも、世間は名優と呼んでくれる。役者とはそういう職業だ。山と海に囲まれた、とある町の古い日本家屋。かつてそこは、日本の映画界を支えてきた笠松市朗が、愛する家族と過ごした家だった。笠松の息子、俳優・園田準一、笠松の前妻であり女優だった園田睦子、そして人気俳優で、笠松の二番目の妻との間に生まれた岡本裕。岡本の恋人である、人気女優の二品真里。バラバラになっていた彼ら五人が笠松の家に集まった。彼らの葛藤と思いが交錯するドラマの幕がいま開く。みな役者という彼らが、ひとつ屋根の下展開していくドラマ。「ラプソディ・イン・ラブ」――監督、紺田がつけたタイトルだ。彼らの言葉は、台詞か、真実か……。「東京バンドワゴン」シリーズの著者が描く家族の肖像。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あつひめ
105
あー小路さん。素敵なお話を読ませていただきました。役者一家という一癖も二癖もありそうな人達をこんなに上手く導いてしまうとは。それぞれのキャラを石膏で作り上げていくようでいて、実は薄皮を剥ぐようにそれぞれの心の重い荷物を露にする。時を飛び越えて家族を演じる。素と演じるの間をいったり来たり。人はどこまでも自分を作るんだなとも思ったり。死を間近にすると過去を消したくなる…それは死を間近にしなくても思っている人は多いかも。私もその一人。私は家族とこんなに向き合えるだろうか。大きな課題を与えられたような気がする。2014/02/21
七色一味
87
読破。最初の数頁、作品の設定について行けなくて入れなかったけど、父、最初の妻、その子、二度目?の妻の子、その子恋人──そして、全員が俳優・女優。その関係が納得できたところで没入。一種の衆人環視での、家族劇を実際の家族が演じると言うお話し。その中で、各自が抱えた爆弾が投下され、波紋を広げてゆく。家族なのに、ピーンと緊張の糸が張り巡らされている──、フリークライミングを見ているような感覚かな。何というか、分類不能な、ちょっと素直にはオススメしたくない作品です。2013/02/21
Norico
78
ある伝説的な名優の死が近づいたとき、その家族である俳優たちが一緒に暮らしてる姿を映画に撮る・・・という設定で、家族のそれぞれの視点で物語が語られていきます。睦子さんのイメージは原節子さんでしょうか?そうすると市郎さんは誰だろう?とか想像するのも楽しい。市郎さんは俳優として、理想的な死に様ですね。どんな映画が出来上がったのか、見てみたい。2015/07/15
りえこ
72
読み始めたら止まらず、面白くてどんどん読んでしまいました。全員力のある役者で、家族として繋がっている人たちの共同生活をドキュメンタリーで撮るなんて、すごい話。役者ではない人も、普段も演技しているときはあるわけで、そこに近い状態なのかなと想った。2014/05/05
紫綺
70
バラバラに人生を歩んでいた名優一家が、昔に戻って一つ屋根の下で家族を演じる映画を撮るという設定。はじめは戸惑い、なかなかその世界に入っておけなかったが、頁を繰る毎にのめり込んでいく。他の小路作品とは少し毛色が違うように感じるが、富み終わればやはり小路作品である。余韻を引く穏やかな気持ちになっている。私も息子に「良い父親だった」と言ってもらえる人生を全うできるだろうか。2011/08/20
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