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内容説明
建設当時、ピラミッド以来最大の建造物といわれたビルを創ったのは、日本人の血をひく建築家ミノル・ヤマサキだった。シアトルのスラム街で育ち、差別と偏見と戦いながら、世界を相手に建築の世界でのし上がって行った日系2世。しかし、その成功の裏では、四度の結婚を繰り返す華麗な女性遍歴、仕事漬けの毎日に崩れ行く家庭、度重なる病気と非道な事務所経営――、日米の綿密な取材により忘れられた世界的な建築家の実像に迫る。
目次
アメリカに渡った兄弟
シアトルのスラム暮らし
アラスカの“キャナリー・ボーイ”
建築家ヤマサキの誕生
空のグランド・セントラル駅
「静寂と歓喜」に目覚めた日本との出合い
光と影のマクレガー
摩天楼への道
離婚、そして再婚
世界貿易センタービルという混沌
葛藤する巨塔
栄光と引きかえに壊れた家庭
サウジ・コネクション
生涯をかけた仕事
死してなお
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あちゃくん
32
宮内悠介さんの「ヨハネスブルグの天使たち」でミノル・ヤマサキを初めて知り興味を持って読みました。WTCや世界初の集合住宅プルーイット・アイゴー団地の設計、日系人として差別と闘いながらアメリカの建築業界でのし上がっていったこと、日本人で初めて「TIME」の表紙を飾ったことなど、ミノルの足跡が丹念に描かれています。建築のことなどわからない僕でもわかりやすく淡々と描いているので、なぜミノルの生涯を取り上げたのかという著者の熱は感じづらかったですが、ドラマティックなミノルの生涯を知れて良かったです。2013/08/15
メルセ・ひすい
4
14-09 赤14-10 父、富山県・母、東京生、日本人移民の子 透視図の鬼才!真珠湾攻撃の二日前に結婚。猛烈な差別にめげず生き抜いた天才。ワシントン大建築主席でも卒業写真は白人のもの。黄色いミノルは幽霊なのだ?!ニューヨーク大修士でも猛烈差別。セントルイス空港の建築で一躍トップに。デモ、ストレスは色に!世界貿易センタービルの日系人建築家は、徒手空拳で競争と嫉妬うずまく世界を駆け上った。貧困、差別、努力そして華麗な女性関係。アメリカ建築界をのし上がった男とイスラム受容の軌跡をたどる。評伝 (+_+)2010/10/24
naotan
3
宮内悠介『ヨハネスブルクの天使たち』を読んで。私にとっては、遠い空の向こうで起きた悲劇に過ぎなかった9.11。本書を読んでからあの映像を思い起こすと、胸に迫って来るものがある。世界がミノルの思い描いたような平和に包まれますように。2013/09/21
メロン泥棒
2
9.11の標的。世界貿易センタービルを作った日系人建築家ミノル・ヤマサキの生涯。1日18時間缶詰工場で働いていた時代から日系人男性として初めて『TIME』の表紙を飾るサクセスストーリーとその晩年。ミノル自身はイスラム建築の影響を受け、60~80年代にはサウジ政府や王室のために多くの建物を作っていたが、イスラム過激派の攻撃により彼が作ったWTCが崩壊してしまうという皮肉は運命のいたずらを感じずにはいられない。2010/10/10
さしみ
1
WTCを設計した日系二世建築家のミノル・ヤマサキ氏の評伝です。シアトルスラム街で生まれた同氏が建築家として大成したその一生を辿ります。個人としての能力やバイタリティもさる事ながら、当時またその一世代前の日本人の逞しさは、豊かな社会と引き換えに失われてしまったのだと思いました。建設中のWTCを語る章は、その最期を思うと胸に迫るものがありました。2022/01/29