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内容説明
ヒースクリフはリントン家の娘イザベラを誘惑し結婚する。一方、キャサリンは錯乱の末、娘を出産して息絶える。キャサリンの兄ヒンドリーもヒースクリフに全財産を奪われてしまう。ついに嵐が丘を我が物としたヒースクリフだが、その復讐の手は次の世代へとのばされていく――“究極の恋愛小説”というイメージを超えて、その奥底に潜む著者の熾烈かつ強靱な精神のエネルギーを浮き彫りに。英文学史に屹立する傑作、ついに完結!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
molysk
75
愛するキャサリンはもうこの世の人ではない。二人を引き離した、憎むべきアーンショウ家とリントン家から、すべてを奪い去ったヒースクリフ。両家の子の世代にも復讐を成し遂げた末に、ヒースクリフが目にしたものは――。ヒースクリフとキャサリンは、魂の深いところでつながっていた。しかし、愚かな選択の結果、互いの半身を失った。呵責は復讐へと姿を変えて、自身を含めたすべての人々を破滅へと追い込む。だが、次の世代には、再生への萌芽を見つつあった。これを目にしたヒースクリフの胸によぎったのは、悔恨だったのか、満足だったのか。2021/09/26
アナーキー靴下
72
再読だから結末は知っていたのに、呆然となる程良かった。語り手の妙だけでなく幾多の要素が複層的にこの物語を魅力的にしている。キャサリンとヒースクリフの関係は甘いロマンスではなく、互いを半身とまで考える魂の物語。ヒースクリフは復讐に身を窶すが、復讐で一番傷付くのは自分自身。それを厭わぬ強い愛が二人を結び付けている。しかし人間嫌いのロックウッドと比べると、ヒースクリフを人間嫌いとは全く思えない。求めよさらば与えられん、受動的なヒースクリフは常に相応の応酬をするだけで、周囲は勝手に自分の影に怯えているように思う。2023/08/17
ころこ
46
「ヒースクリフは言いました。「何しろお嬢さんには、リントンと結婚するか閉じこめられているしか、道はないんだからね。」キャシーに言った言葉だが、作者自身に向けられている。そして、ヒースクリフも、また作者自身なのではないか。似たような姉弟、似たような構成の一族、同じ名前の親子は、作者ブロンテ姉妹のことを想起させる。周囲で兄弟姉妹が次々に亡くなっていき、ついには本人が亡霊になる。閉塞した家を物理的には破壊しないで、男女の精神的な統合によって脱出することを願ったのは、何より作者ではなかったか。不思議な小説だ。2023/09/24
長谷川透
35
ヒースクリフの行為を復讐と名指してしまうことを僕は躊躇う。超絶した愛と呼んだ方が相応しい。現実には叶わなかったキャサリンとの恋を、ヒースクリフが抱える空虚を、彼はどんな形であれ埋め合わせる必要があり、どの埋め合わせさえも、彼の慰みにはならなかっただけなのだ。それは叶わなかった恋を次世代に託しても、キャサリンとの思い出の場所を奪還したとしても、だ。今回は再読になるが、やはり素晴らしく面白い小説で、深みが増した気がする。荒削りとも言われるが、この荒削りっぽさが意図的ならば著者は天才を通り越した怪物である。2013/01/31
ねこまんま
34
時代も国も違うので、理解しにくい事は分かるのだが、人物の感情だけが全面に出てくるので、そこに至るまでの状況や背景が分からず結局ヒステリックで変な人たちの話っていう印象しか残らない。映画を見て、二人の愛やヒースクリフの憎しみと狂気が分かって、面白いと思ったけれど、なんか文章だけでは私にはわかりにくかったです。2017/11/22