内容説明
「君の『願望』は──何だね? そして、君の『絶望』は────」 満開の夜桜の下、思わず見とれるほど妖しく綺麗に佇んでいたのは密かに憧れていた従姉だった。彼女はその晩、桜の木で首を吊る。 ──彼女は、あの桜の中にいる。……彼女に会いたい。そう信じ、願う男は、遂に人の願望を叶える夜色の外套を身に纏う昏闇の使者と遭遇する。曰く、暗闇より現れ、人の望みを叶えるという生きた都市伝説。夜より生まれ、この都市に棲むという、永劫の刻を生きる魔人。そして、恐怖がココロの隙間へと入り込み──。 鬼才・甲田学人が紡ぐ渾身の怪奇短編連作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
眠る山猫屋
29
ダークファンタジーというか、奇妙な物語というか・・・兎に角好みのテイストかも。特に終章で描かれた〝見えてしまう少女〟の日常風景が良かった。半身向こう側に置いてしまっている少女のこれからが気になります。追いかけてみたいな。2017/06/16
そのぼん
29
摩訶不思議な世界観でした。日常の中に紛れこんだ異形のものを描いた短編集で、なかなか面白かったです。 主人公にしか解らない幸せの形―。読み終えたときの感想は人によって意見が違いそうな気がしました。2012/06/13
巨峰
25
よどみない語り口に、想定できない怖さ。そして、櫻の怪しさ。日本のホラーはこうでなくっちゃ。かなり怖かったです。2012/08/28
なつきネコ
17
相変わらず甲田さんの作品は怖い、接鬼奇譚は良い話だなと思ったら、まさかのグロ。死んだ憧れの従姉妹へのヤンデレ話と思えば、接ぎ木の痛々しい話。見ようには良い話と言えるのかな。最初の白線の上は安全の話は昔、よくやったな。そこから、あんな怖い話できるなんて。まさにどこかの怪談のように伝わっていくような怖さがあった。ヌイグルミも怖いな。私はすぐに縫い直せと思っていたけどな。この話は甲田さんにしてはグロさを見せずに都市伝説風に終わらせたんだなと思った。最後には詠子さんのサプライズは嬉しいな。 2017/08/18
幸音
17
「夜魔―奇―」よりも怪談性の強い方で、時系列的に詠子が成長してからの話。淡々とした文章ゆえに音が効果的。「魄線奇譚」ラストはもう狂ってしまったのかも。白線の上は“安全地帯”。「繕異奇譚」古いぬいぐるみが家にもたくさんあるからより身近に感じてしまう話だった。繕った部分はないけれど、その内側に悪夢を抱いているのかも、と思ってしまう。まさにホラー。「接木奇譚」これは「桜下奇譚」とリンク。人を魅入るあの桜の話で、より幻想的な存在になっていながら狂わせる力は健在。自分の手や腕に鋏を入れるところがもう痛すぎる。2014/02/28