内容説明
インドシナ半島の片隅の吹きだまりのような廃墟のような一画にそのカフェはあった。主人はタンゴに取り憑かれた国籍も年齢も不詳の老嬢。しかし彼女の正体は、もう20年も前に失踪して行方知れずとなった伝説の作家・津田穂波だった。南国のスコールの下、彼女の重い口から、長い長い恋の話が語られる……。東京、ブエノスアイレス、サイゴン。ラテンの光と哀愁に満ちた、神秘と狂熱の恋愛小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
あんこ
36
立て続けに中山可穂の小説を読んでいる。きっと中毒。そうでなければ、わたしはこの文章に辟易していたかもしれないと思わずにはいられない。散りばめられる何処かの国の薄暗い路地裏のような倦怠感と絡まるような熱いタンゴの空気にいつの間にか酔ってしまう。普段ならこのような文章も甘ったるくて痛々しい愛の物語なんて途中で止めてしまうのに止められない。2014/04/04
nonpono
34
表題作の中で印象的な言葉に出会えた。ベトナムが舞台となる編集者の真樹と作家の穂波の恋の物語。昔は愛し合ったが、別れた二人の想いが再燃する。「真樹は四十歳、穂波は五十七歳。新しく人生をやり直すには遅すぎるが、すべてを諦めてしまうにはまだ早い。タンゴのいいところは年を取っても踊れるところだ。」と。20代で単行本を読んだときは立ち止まらなかったが、30代を迎え、わたしの何かが揺れた。第二、第三の人生、諦めなければ、いつでも始められるのだ。人生の豊穣さが味わえる短編集。2023/03/29
有理数
26
あーーーーーー、もう、助けてください、と読みながらひれ伏すように、静謐で穏やかな文章が私の脳内で火花を散らす、ざくざくとむき出しの感情でこれでもかと貫いてくる、あまりにも痛く、眩しい恋の短編集。いや、でも助けられなくてもいい、この文章に溺れられるならば。どの短編も非常に面白いのですが、やはり中編の表題作でしょう。作家と編集者、それぞれの道をひたむきに歩まざるを得ない人たちの魂の強烈な叫びと愛の物語。全編タンゴの脈動と音色に彩られた、素敵な一冊でした。2017/04/25
冬見
21
濃密に絡み合う過去と現在に翻弄されながら、息を潜めて読み進めた。中山さんの作品はいつも私の息の根を止めようとする。切迫感に満ちていて、息苦しい。追い立てられるように読み進めてゆくうちに、いつの間にかこの世の果てみたいなところに辿り着いている。幕が降りても帰り道が分からない私は、呆然と立ち尽くすだけ。2017/01/12
あまりりす
19
ああ、やっぱり中山可穂さん、好きです。。。セクシャリティ云々ではなく、彼女の描く恋愛は、重く、熱く、切なく、でも読まずにはおれない、尋常ならざる魅力(魔力?)が溢れています。表題作の、まさに締め付けられるような切なさたるや!読後すぐにアルゼンチン・タンゴを検索してしまうほど、のめり込みました。。。あとがきでも涙が滲みました。とても美しく、物哀しい世界、それでいて希望も見える、本当に素敵な作品でした。ああ、この本に出会えてよかった!2014/05/17
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