内容説明
わが手にかけたはずの明智光秀が「生きていたぞよ」と聞いた忍びの小五郎。噂がまことなら、今度こそ討ち果たして忍びの名誉を取り返さなくてはならない。しかしその道筋は意外な方へ(「首」)。潜入先で忍びの正体を見破られ、恐れ入って寝返った寅松。だが、その寝返りを自分の味方に知られ…(「寝返り寅松」)。歴史の裏で活躍した「忍び」同士の因縁の対決、哀愁、恥、名誉など、非情な宿命の中で熱い血をもって生きる姿を描く。全七篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とん大西
105
翻弄する忍び、される忍び…いいですね、哀愁もあって。戦国から江戸初期にわたる選りすぐりの忍者短編集。池波さんの忍者モノなら先ずはハズレなしです。ハードボイルドな忍びの世界観の中でどこか人間臭さが漂っているあたりが滑稽でもあり、悲しげでもあり。ハラハラしたものの案外ほっこりした「寝返り寅松」のすわりのよさょ。「首」もいい。仕止めたはずの明智光秀はまさかの影武者だったか。その生死に執着を捨てきれなかった小五郎の生きざまがなんとも…。2023/02/14
優希
79
忍者の群像劇が格好良かったです。戦国時代末から江戸時代にかけての忍者たちの活躍や葛藤、悲哀が感じられました。そのせいか、忍者に人間味があります。時代が時代なだけに生々しさや泥臭さも見えますが、池波作品らしい面白さでした。2016/03/02
pdango
16
★★★★☆2022/12/31
シュラフ
16
忍者という異形の生きざま。本来 何らの感情も持たず、掟を守って行動するその生きざまである。だが、忍者といえども人の子であり、感情もあれば人情もある。あくまで掟を守ることに窮屈をおぼえた時に人間ドラマが生まれる。この本にはそんな短編7作である。掟を破った忍者の最後は悲惨な運命なのであるが、『寝返り寅松』の寅松は最後まで生き長らえて再び家族とともに暮らすこととなる。小説の中の話とはいえ、ほっとする。2014/07/13
りこ
14
今までの忍者のイメージとは違った人間性あふれる一冊、個人的には、戦陣眼鏡が一番好きです。乱世から遅れて生まれ己をもて余す忠善と助右衛門の主従の生きざまが可笑しくも哀しい。2015/04/07