内容説明
南方熊楠、泉鏡花から始まって、谷崎潤一郎、石川淳、稲垣足穂、小栗虫太郎、久生十蘭、埴谷雄高など、一九一〇年代生まれまでの日本の作家二十五人についてのエッセイをすべて収録した〈上巻〉。とくに泉鏡花や江戸川乱歩、石川淳、そして交遊の深かった稲垣足穂を書いた批評に表れた独自の眼は鋭い。批評家としての澁澤を読む文庫オリジナル集成。
目次
南方熊楠―悦ばしき知恵 あるいは南方熊楠について
南方熊楠―南方学の秘密
泉鏡花―化けもの好きの弁 泉鏡花『夜叉ケ池』公演に寄せて
泉鏡花―城3
泉鏡花―天上界の作家
泉鏡花―『夜叉ケ池・天守物語』解説
泉鏡花―鏡花の魅力 三島由紀夫(’69・1)
高浜虚子―物の世界にあそぶ
谷崎潤一郎―地震と病気 谷崎文学の本質
谷崎潤一郎―谷崎潤一郎とマゾヒズム〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
25
難解な印象を勝手に感じ今まで読まず嫌いだった書き手なのだけれど、いざ読んでみると文体は平易でとっつきやすい。フットワークの軽さに驚かされる。幅広く色々な作家の本をヴァランスを探って読み、そしてその博識をイヤミにならない程度に披露する。知識人の理想的な姿、と言えるだろう。この本を読んだことで同じく読まず嫌いだった稲垣足穂に挑んでみたくなったし、三島由紀夫も読みたいと思わされた。難を言えばやはり狂人/奇人の発想ではないところか。論理のぶっ飛び具合が大人しい、とも言える。澁澤的スクラップブック、と呼ぶべきだろう2019/07/30
うさぎや
4
とりあえず黒死館殺人事件がたいそう好きだということはよくわかりました(笑)2021/02/04
三柴ゆよし
3
書評、映画論、日本芸術論と続いて、今度は日本作家論集成。批評家としての澁澤龍彦を一望できる好企画だと思う。批評、といっても大半は批評的エッセイ、あるいはエッセイ的批評といった趣の文章なので、あまり肩肘張る必要はない。澁澤の茫洋たる「知」の体系の前では、ボンクラの僕などミジンコ以下の矮小動物に過ぎぬが、それでもこうしてまとめられた彼の仕事を眺めていると、いくつかのキー概念みたいなものは自ずと浮かび上がってくる。これについては、近いうちに下巻の感想で。もっとも、それまで覚えていればの話。2009/11/06
クリイロエビチャ
0
鏡花について三島由紀夫との対談が載っていたので購入。三島の絶賛っぷりが突き抜けていて、読んで楽しかった。石川淳や小栗虫太郎、久生十蘭なんかの評論が多く掲載されているけど、澁澤龍彦の好みに合ったトコだけが執拗に論じられているので、それぞれの作家を読み込んでいないとわけがわからない。論者の思考とクセが強く、波が合えば新しい作家との出会いになるかも。合わないと、「この作家の本は絶対読まない」ってなってしまうので要注意。この評論集は上下巻だが、作家の食わず嫌いになるのが怖いので、下巻は読まないことにする。2012/10/26
歯車くじら
0
上巻ですのでまだなんとも。2010/05/24