内容説明
終戦の翌年、極東国際軍事裁判が始まり、賢治はモニター(言語調整官)として法廷に臨むことに。戦勝国と敗戦国、裁く者と裁かれる者、そのいずれもが同胞だった……。重苦しい緊張の中で進行する裁判の過程で、自らの役割に疑問を抱き始める。家庭では妻との不和に悩まされ、次第に追い詰められてゆく賢治は、日本で再会した加州新報の同僚・梛子に、かけがえのない安らぎを感じていた。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
98
東京裁判の詳細が語られていきます。戦勝国と敗戦国、裁く者と裁かれる者が同胞であることが辛いところでした。法廷には重苦しい緊張感と矛盾に満ちた空気が感じられました。日本が徹底的に叩かれる息も飲むことが苦しくなる裁判。アメリカと日本の両国の心情が分かるからこそ日系二世の苦悩があるに違いありません。著者はおそらくこの東京裁判を描きたかったのでしょう。それだけ緊迫感が伝わりました。残り後1巻、頑張って読みます。2016/02/18
おたま
72
ついに迎える極東国際軍事裁判。天羽賢治はモニター(通訳の正確さをチェックする言語調整官)として裁判に関わる。裁判長、連合国側の検察官、日本人被告を弁護する連合国の弁護士、そして被告たち。そこには太平洋戦争を巡って、様々な思惑が錯綜する。米軍兵士でありながら、日系人でもある自らの在り方に忠実であるべく、天羽賢治は限りなく公平にモニターとしての職務に徹する。だからこそ、彼は悩み苦しまざるを得ない。例えば、日本がアジアで行った残虐行為と、アメリカが広島、長崎で行った原爆投下とを、彼はいずれも受け入れ難く思う。2022/02/26
ともくん
68
ついに始まった、東京裁判。 南京大虐殺や、真珠湾攻撃の真相が、徐々に明かされていく。 日本は、被害国なのか、加害国なのか。 だが、敗戦国なのは、間違いない。 敗戦国が裁かれる未来とは。 その中で、賢治も、己の未来と日本の未来に揺れ動く。2019/03/20
taiko
53
ついに始まった東京裁判。言語モニターとして、裁判に参加する賢治。父の見舞いでアメリカに一時戻った賢治は、リトルトウキョーの裏庭に埋めた日本刀を掘り返したことで、日本人としての血が騒ぎ出す。…東京裁判をまとめた巻、読む進めるのに苦労しました。賢治と梛子のシーンが出てくるとホッとします。(笑) 梛子とエミーを比べたら、やっぱり梛子よね、と思いますが、エミーはホントに性格的に損をしてるなと…。 彼女に起こった不幸も本人が招いたことでもあり、結果賢治との仲も上手くいかなくなるなんて。 →続く 2019/04/14
まつうら
51
(第二巻の続き)原子爆弾の犠牲になったのは、日本人ばかりではなかった。日系二世の梛子も被爆のすえ白血病を発症し、ついには帰らぬ人となってしまう。賢治の最愛の人にして、唯一の心の支えだった梛子。賢治の号泣する姿が痛ましくて見ていられない。放射能が人体に悪影響を及ぼすことは当時から知られていたのに、何の調査もせず原爆投下に踏み切った米軍。日本人を放射能の実験台にしたのか? 著者はこんな酷い人種差別に怒りをぶつける。ここに痛ましい賢治の姿が重なると、ページをめくる手に憤りを隠せなくなる。(第四巻へ続く)2022/12/10