内容説明
メディアで大反響を呼んだ、猟犬フチと羆を追う孤高のハンターの物語!
「必涙。」―― an・an
・NHK週刊ブックレビュー・週刊文春・週刊新潮・週刊朝日・北海道新聞・日経新聞・ソトコト ほか多数
これほどまでに迫真に満ちたハンティングの記録があったでしょうか。著者の久保俊治はいまも北海道・知床半島で羆を追う孤高のハンター。20代の頃より羆専門のハンターとして活躍、猟歴40年以上を誇ります。アイヌ語で火の女神を意味する「フチ」と名付けた北海道犬を相棒に小樽から知床半島まで羆を追い駆けめぐります。さらにはアメリカにハンター留学もしてさまざまな体験をします。初著作とは思えぬ卓越した筆力で壮絶な猟の一部始終を活写しています。ワクワクするような冒険譚に加え、大自然の春夏秋冬を繊細に描写。そして心を打つ「フチ」との悲しい別れのシーン。つまり著者は言葉を持ったハンターなのです。端的に評せば戸川幸夫氏+北方謙三氏。質の高い新たな動物文学の書き手が誕生しました。
目次
序章 信じられぬ出来事
1章 若きハンターの誕生
2章 闇からの気配
3章 襲撃された牛舎
4章 火の女神フチ
5章 五感の覚醒
6章 アメリカ武者修業
7章 山の魔物との遭遇
8章 永遠の別れ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
74
よい本に出会えた。猟師のルポかと思っていたら著者の体験が活き活きと描かれている、猟師が動物と対峙するときの気持ちや動物が姿を現すまでに起きる五感がすごく伝わってきた。羆を仕留めた後に自然への敬意や自然の中から得られるもの、その価値とは何かということを感じるという著者の気持ちも描かれており、中盤から登場する猟犬フチとの出会いから共に山で過ごす場面もいい。羆がただ怖い動物として書かれているのではなく強さが前面に出ている。面白さに音楽、テレビつけっぱなしのながら一気読みだったのが残念。静かな所で読む本だと思う。2015/12/20
モルク
73
筆者は日本で唯一の羆のプロハンターだけあって羆との対決シーンは臨場感がある。またそのあとの処理、皮を剥ぎ内臓を取りだし…も、まるでザクザクとナイフの音が聞こえてくるようだ。そして獲物に対する敬意も忘れてはいない。これぞ命をもらって生活をしているというプロハンターの心得だろう。相棒犬フチへの惜しみない愛情と絆、子犬の頃からの猟犬としての教育。資質もあっただろうが、それにまっすぐに答えようとするフチの健気さ、そして悲しい別れに涙する。2018/05/06
とくけんちょ
50
自然と生きる。貪ることを嫌い慎ましく生きる。憧れます。命の危機に晒されることによって、初めて充足感が得られると思ってます。生物の中で圧倒的強者である熊とのやりとり、さらに自然とのやりとり。厳しさを感じる描写は少ないが、命の描写は多く、常に人工物で囲まれた自分を解き放ってくれる。あー、山に行きたい。2023/09/17
アポロ
41
大好きです!読んで良かった!2019/11/21
spatz
38
こんな世界が、生活圏からさほど遠くないところにあったのかと驚愕。森の中に鹿や熊はたしかにいる。目撃情報が連絡網でくるし、バスの乗降を見守り要請がくる。熊狩を生業とする人。体験を語る言葉の迫力(などという言葉では到底及ばぬのだが)、筆の力。猟の相棒フチを語る言葉は愛する人か子を思うかのよう、かつ命懸けの狩につれてゆき、共にその瞬間をわかちあう。ここの感想は多くないが名著だと称されるのがわかる。たしかに、アイヌ犬フチとのかかわりは子どもとの関わりに通じる物がたくさんあった。 2021/04/26