内容説明
都知事の発案でより早く急患に対応すべく急遽開設された「東京ER」。その精神科は、日々、緊迫した空気に包まれている。パトカーや救急車でひっきりなしに運ばれてくる患者たち。父親から捨てられ自殺を図った兄妹。心のバランスを崩し、深夜の霊園で叫ぶサラリーマン。「愛が欲しい」と恋人の前で包丁を取り出す女性。極度の緊張の中、厳しい現実と格闘した現役精神科医が語る壮絶人間ドキュメント。
目次
アメージング・グレイス
すまき
ER的日常
さとうきび畑
狂気か、正気か、病気か、性格か
まとわりつく白衣
「ちょ、ちょ、ちょっとおかしいです」
何も知らない、何もできない精神科
生きるためのリストカット
3番からのコール
ある日、突然に
ビジネスマン、うつ病
未来はないのか?
抜け落ちていく記憶
ありふれた病・アルコール依存症
異国で働くプレッシャー
猫屋敷
止まらない暴力
変わらない現実の中で
最後の当直
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そる
217
初読6年くらい前で再読。精神科の入門書的な本だがERという救急システムでの事例で症状が激しいので、精神科はみんなこんなもんだ、と思ってもらっては困る。徐々に始まり派手になり治療して治ったり小康状態、陰性症状になったりする。作者が言っている、医療者ほど精神科に対する偏見が強い、すごく納得、実感。「「精神病の人は、自分で自分のことをおかしいとは思ってないんですよね?」ときどき、こう言われることがあり、内心むっとしてしまう。(中略)罪を償うことさえ認められないのだろうか?将来に絶望するしかないのだろうか?」2019/10/18
扉のこちら側
57
初読。いくつかの症例が短くまとめてあって読みやすい。執筆当時との考えの違いをあとがきできちんと説明しているところに好感が持てる。2013/04/20
佐島楓
30
東京都の救急精神科のシステム、退院後の患者のケア、この二点について深く考えさせられた。いずれも、未成熟で問題点が多い。特に後者、患者が回復期にどれだけ安定した状態を維持できるか、いかに支障なく日常生活を送れるか。大事なことなのだが、まだまだこの視点が欠けていると思われる面はたくさんある。今後の課題だと感じた。2012/10/31
HoneyBear
28
傍から見ると眩ゆいキャリアを積んでいながら鬱で自らを傷付けてしまう知人が多くなった。若い頃はわいわいと酒を飲み酔っ払って発散できたが、年齢が上がるにつれストレスを大っぴらに発散できなくなったことが一因か。家族によれば自分も最近一人で呟いたり叫んだりすることが増えてきたらしい。(まだ笑い話ですんでいるが。)精神科ERというのは特殊な現場だ思っていたがそう特別ではないのかも。気軽に備瀬先生のような方に診てもらえるような時代になれば良いなと思う。ここに感想を書き込むのもちょっとしたガス抜きになっていて有難い。2014/04/01
*すずらん*
27
いかに「精神」という、目に見えないものを扱うのが難しいかを思い知らされる。やはり医者の人間的器の大きさ、経験値が物を言うのだと思う。まだまだ偏見が付き纏う世の中で、精神病名をつける医者には大変な責任が伴うはずだ。都のシステムは勿論だが、まずは私達が偏見をなくすこと・きちんと正しい病識を持つことが、何よりも大切だと思う。読んでいただければわかると思うが、この本に描かれている人達は、何も特別な人ではない。明日の私やあなたの姿なのだ。2012/10/17
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