内容説明
旗本の次男、中藤冲也が余技として作る端唄は、独得のふしまわしで江戸市中のみならず遠国でももてはやされた。しかし冲也はそれに満足せず、人を真に感動させる本格的な浄瑠璃を作りたいと願い、端唄と縁を切り、侍の身分をも棄てて芸人の世界に生きようとする。冲也の第一作は中村座で好評を博するが、すぐに行き詰り、妻も友をも信じられぬ懐疑の中にとじこめられてしまう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
228
日本文化に疎い私はまず、浄瑠璃の歴史から調べることから取り掛かったこの作品。登場人物を頭に入れるのも一苦労だったが、あっという間にお京とおけい、冲也をめぐるふたりの魅力的な女性の虜になり、物語は進んでいく。そしてそして、途中にあるんですよ、ものすごい官能シーンが。これがもう、現代作品よりもよほど…。さて、怒涛の下巻へ!2016/08/09
じいじ
91
大好きな山本周五郎の小説だが、如何せん浄瑠璃、常磐津…などの素養がまったくないので、出だし馴染むのにえらく手間取ってしまった。主人公・冲也の浄瑠璃発展への直向きな意欲は伝わってきた。ところどころでお京の寝顔など色っぽい場面が、周五郎氏らしい無骨な描写で登場して、読む意欲を掻き立ててくれます。期待を込めて、下巻へ突入します。2019/06/23
すしな
52
053-24.侍をやめて浄瑠璃作家になった冲也が、最高の浄瑠璃を求めて放浪する話です。彼はそこそこ売れてたわけですけど、それが自分の実力じゃないことが発覚して、自分の力だけで成功したいと旅に出ます。上流階級の出なので、市井の庶民がどういう気持ちで生きているかとかわからずに浄瑠璃を書いていたと言うので、旅先で出会う人たちの生身の姿を見て、生きていくことの何たるかをつかみ始めるわけですけど、登場人物たちの人間臭さとかアクの強さはロシア文学っぽくもあり、最初は退屈でしたけど引き込まれていきました。2024/05/29
キムチ
44
周五郎3大長編の一角。個人的には、これが一番好き。勝手に沖也の容貌を想像して、おつたの心情を被せる。士族ながら浄瑠璃作家の道を究めんと煩悶する彼の内省の部分が延々と続く上巻。個人的にちんぷんかんぷんだが「芸道の究極の道へ歩を進めて行く」感覚は朧気ながら。。とは言え、ある種の狂気すら覚えるその意固地さは今なら一種の奇人変人?おつたとの関係に身体が絡まぬのが不思議なまま下巻へ。
おか
36
読友さんのお陰で 又良い山本周五郎の世界に浸れた。周五郎さんの性描写も読んでる私もうっとりする世界。そして 芸の世界に少しだけ身をおいたことのある私にとって 冲也の煩悶は よくわかるが この歳になると 彼の若さ故の焦り 苛立ち 自己主張 に危うさを感じ 読んでいる間中 落ち着け!一歩引いた所から周りをよく見て なぁんて声を掛け続けていた。山周さんが こんな冲也を不幸にする筈が無いと信じて 下巻にいこう2025/08/28
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