千々にくだけて

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千々にくだけて

  • 著者名:リービ英雄【著】
  • 価格 ¥649(本体¥590)
  • 講談社(2014/05発売)
  • ポイント 5pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784062761611

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内容説明

バンクーバー経由でニューヨークに向かったエドワードは、奇妙なアナウンスとともにカナダの見知らぬ街で足止めされる。繰り返し流れるテロの映像に芭蕉の句がオーバーラップして……。9.11を日本文学として初めて表現したと評価された大佛賞受賞作に、著者の原風景ともいうべき名作「国民のうた」を併録。(講談社文庫)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

364
まさにその日にニューヨークに行くはずであった主人公のエドワードを通して9.11を描く。リービ英雄にとっても極めて重い事件であっただけに、どのように語るかには相当に苦慮しただろうと思う。結局、彼が選んだのはエドワードをヘヴィスモーカーにすることで、バンクーバーに足止めし、半ば間接的に9.11を体験させるという方法であった。当日のニューヨークを舞台に迫真の情景を書くこともできたかもしれないが、これが作家にとって最も誠実な向かい方だったのだろう。タイトルは芭蕉の松島での句「島々や千々にくだけて夏の海」から⇒2022/05/11

ntahima

34
「勿論、ドイツの言葉も歴史、文化も愛している。でもドイツには住めない。余りにも長く離れ過ぎた。」と、悲しそうな顔で、先生は在外独人教育の為、ボリビアへと去った。一方の私は生来のデラシネ気質故か、子供の頃から、国家とか宗教、アイデンティティが一体何を意味するのか理解できなかった。本を読み、頭では理解したつもりだが、未だに皮膚感覚としては分らない。越境作家と呼ばれる著者なら、何かを教えてくれるかと手に取る。誰でもない者として、どこでもない場所を彷徨歩く浮遊感は小説として素晴らしい。但、ここにも答えはなかった。2012/07/22

ハチアカデミー

16
表題作に描かれるように、9.11に際してアメリカにへ飛行機で向かっていて、事件の影響で隣国カナダへ入国し、留まらざるを得なかった作家がいたことは、ひとつの奇蹟である。しかしその特権的な体験に甘えていない。アメリカ人、日本人、中国人、それぞれの国民意識と言語が入り交じり、その「あいだ」で揺らぐ人物が主人公であり、家族もまた、一概に「~人」と表現できない複雑さを持つ。「かえりたい」と言葉にすると「どこへ」という問いが還る。「わたしたち」という言葉に自分が含まれていると気づき唖然とする。違和感の描写が鋭い。 2013/09/24

乱読999+α

11
米国同時多発テロ事件から19年が過ぎた。日本人の記憶からは少しずつ薄れてきたような気がする。米国生まれだが日本で50年以上暮らすリービ英雄氏の作品、初読み。2001年9.11当日とその後数日間、そして1年後を淡々とした文章でネガティヴとフォーリナー、英語と日本語の狭間で揺れ動く様子、葛藤を描いている。また、彼の持つアイデンティティにも言及しているのだが、写生的文章で内面を深くは見せない。それでいて日本語で書かれた9.11事件は日本人にも真摯に訴えかけている。実に興味深く読み終えた。2020/09/12

giant_nobita

7
日本文学の枠内においては、911でカナダに足止めされた体験をアメリカ人作家が日本語で書くというのは珍しいことなのだろうし、内容についても、戦争を煽る言葉や宗教による救いに背を向け、事件の被害者やアジア人の声に思いを寄せる主人公の姿は、アメリカから遠く離れた日本の読者の共感を呼ぶかもしれない。「IT'S WAR!」という新聞の見出しにアジア人の少女をオカズにして精液をぶっかける場面や、先住民のトーテムポールの前で記念写真を撮り明るい声を上げるアジア人を描いた場面は象徴的だ。2018/12/24

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