内容説明
漢の最盛期、武帝の時代。が、北辺の地に匈奴の来襲があいつぎ、時代に影が兆しはじめた。李陵は、五千の少兵を率い、十万の匈奴と勇戦するが、捕虜となった。その評価をめぐり、華やかな宮廷に汚い欲望が渦巻く。司馬遷は一人李陵を弁護するが、思いもかけぬ刑罰をうける結果となった。讒言による悲運に苦しむ二人の運命に仮託して、人間関係のみにくさ美しさを綴る「李陵」他に、自らの自尊心のため人喰い虎に変身する李徴の苦悩を描く「山月記」など六編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
106
面白かったです。中国古典を題材にしているので、少し硬さは感じますが、独特の文体は、物語に引き込む力がありました。古代中国や怪奇的ファンタジーの雰囲気が漂いつつも明確な世界観。それは簡潔な文章が作り出すものだと思いました。『山月記』は高校生の頃、現代文で学んだだけあり、とても懐かしかったです。今読むとより味わい深いものがありました。2016/10/19
扉のこちら側
97
2016年524冊め。『李陵』『弟子』『名人伝』『山月記』は他の文庫で既読、再読。今回初読だったのは『悟浄出世』と『悟浄歎異』。『西遊記』の印象とはだいぶ変わってくる人物感。著者の病弱さからきている死生観だとか、生きることの人間のエゴとか、興味深い。2016/07/06
優希
82
中国古典から題材をとっているので、少し硬さを感じました。ただ、文体が独特だからか、物語に引き込む力があると思います。古代中国や回帰的ファンタジーの雰囲気が流れながらも明確な世界が出来上がっているのは、簡潔な文章が成し得ているからだと思わされます。『山月記』は高校の頃読んでいるので懐かしかったです。2019/08/17
明智紫苑
61
古代・中世の中国ものばかりの短編集。「弟子」の子路が良い意味で「ヤンキーキャラ」だ。孔子が本当に一番愛した弟子は、実は顔回でなくて子路じゃないの?2018/08/05
シ也
54
高校の教科書で「山月記」を読んで以来の中島敦作品。あの頃はよく分からなくて朗読のCDを聞きながら爆睡して怒られたり「その声は、我が友、李徴子」とかよく分からんネタにしていた。で、感想だがいや、難しいわ。古い時代の中国はよく分からん。ただ、「李陵」の宮(腐)刑はアカン。あの男にしか解らない股間がムズムズというかフワッとなってヒュンとくる感覚が押し寄せてきた。悟浄の話は子供の頃に読んだ西遊記とは違う感じで面白かった。もう一度改めて読まねば2016/05/17